【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。
外に出て庭園を歩くと本当に大きな池があった。大きな池には大きな鯉が数匹と普通の鯉が泳いでいた。それに日本庭園なのに何故かバラ園があり薔薇が色鮮やかで綺麗だ。
「……ふ、郁斗さん」
「ん?」
「なぜ、私なんでしょうか?」
ド直球かと思ったが、理由が知りたかった。
ここに来る前にお祖母様にも少し聞いた話だけど、お相手が私を強く望んだらしい。
聞いた時は日本舞踊家としての自分を見たのだろうと思っていたが、まさか郁斗さんだとは思わなかったが。
「百合ちゃんが好きだからだよ、ずっと前から」
「……っ、そんなはずは」
だって、彼はお姉ちゃんのことが好きで亡くなった今も好きでいる。だからずっと前からというのは信じられない。
仲睦まじくしていて憧れていたからあの時私は……いや、もう過去の話だ。
「私は、ずっと家のために政略結婚をするのだと思っていました。だけど、郁斗さんなら安心です」
「じゃあ、それなら」
もしかしたら、姉と顔がそっくりな私が欲しいだけなのかもしれない。
亡くなってからたくさん会う機会があったから情があるだけかもしれない。
だけど、私はずっと……郁斗さんのことを。彼を慕っていた、ずっと前から。
姉に郁斗さんと婚約したと聞いたあの時から。
「わかりました。この縁談、お受けいたします」
私はこの人と結婚することに決めた。