【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。
「さぁ、百合ちゃん。行こうか」
「はい。郁斗さん」
郁斗さんが少し前を歩き、私は郁斗さんの背中の紋あたりに目線を置いて褄を取り歩いてホテルの最上階にある大ホールへとスタッフさんに案内してもらい彼にエスコートされながら向かった。
大ホールのある階のエレベーターが開くとすぐにシャッターの光が急に現れる。ここから始まるとは思っておらず、驚く。心の中ではアワアワしていたがここは冷静にならなくてはと背筋を伸ばす。
私は上半身を気持ち傾けて、一瞬静止して戻すと背筋は伸ばしたまま首だけを曲げるのではなく腰から上を傾けて動きは滑らかに、目線は体の傾きに合わせる。手を体の前で右手の上に左手を添えた。
慎ましく郁斗さんの後ろについてホールへと入ると再びお辞儀をした。そして穏やかに笑顔を見せる。
公演でもカメラに囲まれたことは多々あるけれど、日本舞踊家としてではなく百合乃として郁斗さんの奥さんとして囲まれるのは全く違ってこちらを見る目線が違っていた。
ホールに入り、二つ椅子が用意されていてそこに座ると、一斉にフラッシュがたかれ中継されているのか見たことのあるテレビ局のステッカーが貼られたカメラを持つカメラマンが数人いた。
深呼吸を見えないようにすると、司会の人が話し出して会見が始まった。
「この度は、私たちの結婚発表にお集まりいただきありがとうございます――」