【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。


  ***


 それから一週間後、千曲流日本舞踊春季公演会の日を迎えた。
 公演会は午前の部と午後の部で分かれていて朝十時から始まる。午前の部の最初はキッズ教室の子たちと初心者教室の人だからまだまだ時間があるので私は案内係としてせっせと働いている。


「百合乃さん」


 後ろから声を掛けられて、振り向くとそこには和服を着ている郁斗さんがいた。


「あっ、おはようございます。月森さん、本日は素敵ないけばなをありがとうございます」

「気に入ってもらえてよかったよ。こちらこそ自由にやらせてくれたから楽しかったよ」


 このホールの入場口の手前にある華は郁斗さんの持参した織部焼きの深い緑の花瓶にコバンモチやスカシユリ、モンステラの花を使い華やかすぎず控えめすぎずの程よいコバンモチの葉が生き生きとした彼らしい生け花で素晴らしかった。


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