【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。
「……ねぇ、郁斗さん。話があるんだけど」
「ん? デザートなら頼めばいいよ。遠慮しないで」
「うん。遠慮するつもりはないんだけどさ、私、病気なんだって余命宣告もされちゃって……だから入院することになって――」
その話の数日後、彼女は入院した。
それと同時に婚約白紙になった。
すぐ、強気だった彼女が段々と弱っていって話すこともままならなくなったが婚約を解消しても彼女とは婚約者だったが良き友人だったためお見舞いにはよく行っていた。
「妃菜乃、こんにちは」
「……今日も来たの? 元婚約者なのに」
いつも嫌そうな顔をしていたが、彼女の好きな洋菓子店のプリンだけは喜んでくれた。
「ねぇ、郁斗さん。お願いがあるんだけど……聞いてくれる?」
「改まってどうした?」
「私が死んだら、これをお祖母様に渡して欲しいの。こっちは、郁斗さんの分」
いつ書いたのかわからないけど、きっと入院前には書いていたんだろう。