【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。
午前の部は滞りなく終了して、お昼休憩のアナウンスが流れた。控え室に戻ればドアの前には郁斗さんがいた。
「お待たせしちゃってすみません、廊下で待たせちゃうなんて」
「いや、早く来ちゃっただけだし。気にしないで」
私は彼を中に招き入れると、椅子を用意した。
「飲み物は、お茶でいいですか? コーヒーもありますけど」
「お茶にしようかな」
「了解です。今日は、玉露があるので美味しいですよ」
そんな話をしながら、急須に茶葉を入れて湯呑みに入れていたお湯を入れて蒸す。三分蒸し終わると、湯呑みに淹れた。
「どうぞ、郁斗さん」
「ありがとう、綺麗な緑色だしいい香りだ。いただきます」
郁斗さんはお弁当の包み紙をとってお弁当を広げた。
「それって限定販売の高いやつじゃないですか? 予約がすぐに埋まったって聞きました」
「うん、打ち合わせの時に家元に教えてもらったからついでに頼んでもらったんだ」
「え、私には何も言ってくれなかったのに」
「そうなの? じゃあ、なんか食べる?」
そう言って郁斗さんは私に差し出した。なんだか申し訳ないと思ったけど限定品だし、次の機会はないだろうからと考えてだし巻き卵を一切れ頂いた。
私も自分のお茶をテーブルの隅に置いてから、さっきスタッフにもらったお弁当を広げる。