【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。



「今、私は、郁斗さんのご厚意で日本舞踊家として活動させて頂いています。ですが、今控えている公演を終えたら舞台に立つのは引退をしようと思っています。師範としての活動も制限しようと思います」

「……え、え? 百合ちゃん、それ聞いてないっ」

「今、初めて言いました。ずっと悩んでいて、考えていたことなんです。ただ、現在、教室を二つ担当していますし門下生も抱えています。なので、兄とも相談して次の発表公演が終わったら一人ひとりに話をして同じ師範を持つ方に引き継ぎするつもりです」


 私がそんなことを言うとは思ってなかっただろう、郁斗さんは驚いている。




「……どうして辞めるの?」



 そう発したのは、サクラお祖母様だ。


「元から、兄とは結婚後の活動については相談していたんです。結婚後は、独身時代のようには活動できないだろうと話はしていました。それに相手の家の意向に沿うようにしなさいと両親にも言われていました。サクラお祖母様に習い華道家師範もいただいております。皆さまさえ良ければ、こちらでお世話になりたいのです」

「そう……ありがとうね。私は、百合乃さんが決めたことなら何も言いません。ですが、華道のことは家元である郁斗が決めることよ。だけど、本当にいいの? 今までの地位や経験を捨ててこちらに来るなんて」

「はい。構いません。お役に立てるかどうか心配ですけど、一から稽古させていただきます。なのでご迷惑をお掛けしてしまうかもですが……」


 私は一歩下がり「よろしくお願いします」と言い、両手を綺麗に揃えお辞儀をした。



「……っ百合ちゃん、顔をあげて! 百合ちゃんがそうしたいなら尊重する」

「ありがとうございます」


 それから、郁斗さんはこれからの話は追々しようと言ったことでこの場はお開きとなった。

 そんな話をした後、本邸の大広間に皆集まったと違う家政婦さんが伝えにきた。なので、私たちは本邸へと向かった。




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