【完結】国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。
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「……お疲れ様、百合ちゃん」
「ありがとうございます」
挨拶を済まし、その場から去った私たちは一度別邸へ戻ってきていた。まだ、お祖母様たちは本邸にいるため二人っきりだ。
「さっきの話、なんで教えてくれなかったの?」
「直前まで、迷っていました」
「でも、どうして……」
「月森の皆さんからしたら面白くないですよね。私が師範代を取ったのは二年ほど前。それまで、ちゃんとした華道はやっていないのに」
そりゃそうだ。
あんな急に、最近嫁になった女が今までのキャリアを捨てて経験はあれど華道家になると言ったのだから。
そんな甘ちゃんな考えで何が出来るんだとも思うだろう。
それに彼は月森流華道をまとめている家元だ。