お茶と妖狐と憩いの場
***

 今まで知りもしなかった鬼族の存在。何故私が狙われているのかわからないけれど、いつ現れるかわからない彼らを警戒しながら過ごさなくてはいけないのも大変だ。
 いつものように家事をこなそうと思っても、集中力が続かない。
「……理由さえわかればいいのだけれど」
 私は思った。深守…さんは、今は教えられないと言っていたけれど、理由によっては、鬼族も困っていることかもしれない。
(折成さんは、どうなんだろう…)
 とはいえ鬼族と気軽に会えるものではないだろうし、そもそもあんな事があってすぐだ。鬼族と会わせてほしい――だなんてとてもじゃないが言えるわけがなかった。
「………」
「…どうしたんだい? 手が止まっているじゃないか」
「あ、深守さ」
「深守」
「……深守。鬼族について考えていたんです…いつまた来るかもわからなくて、どうしたらいいのかなって……」
 竹箒を握り締めながら言った。まだまだやるべき事は山ほどあるのに情けない。
「そうよねぇ…。アタシがついてるってだけじゃあ、ちと頼りないトコロあるかもだし……。あ、お洗濯は終わらせといたから安心して頂戴ね」
「いえ、そういうわけではないんですけど…! って、あれ? お洗濯…?」
 私はぽかんとする。いつもは朝ご飯を頂いて片した後、すぐさま洗濯に取り掛かっていた。しかし今持っているのは、竹箒だ。掃き掃除は私の中で基本、家の中の事を終わらせてからこなす作業だった。
「……結望、もしかしたら忘れてるんじゃないかと思ったんだけど…ホントだったみたいね」
 深守は扇子を口に当てるとくすくすと笑った。
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