お茶と妖狐と憩いの場
「あぁっ…もう私ったら…。深守、わざわざすみません」
 私は申し訳なさから何度も何度もお辞儀をする。考え事をしていたからとはいえ、一番忘れてはならない洗濯を飛ばしてしまうなんて…。
「顔を上げなさいな。アタシも此処に住まわせてもらうんだから仕事はしなくちゃだしイイのよ、気にしないで。分担していきましょう?」
 深守は私の頭をぽんぽんと撫でると、廊下を見ながら「気張るわよ」と意気込んだ。
「ありがとうございます…」
「ふふ、大丈夫よ。さ、残りもさっさと終わらせてお茶の時間…しなくちゃね」
「はい。…ふふっ、深守はなんだか…、初めて会った気がしませんね」
 私は深守のひとつひとつの言動が、本当に私を熟知しているような気がしてつい面白くなってしまった。昨日出会ったばかりだというのに、何故そう思うのかはわからなかったけれど。
「…………」
 深守は私の方をじっと見つめながら、言葉を失っている。私は、人によっては失礼だったかな。と思い訂正した。
「あ…えっと、ごめんなさい…。何だか落ち着くんです」
 今度は軽く頭を下げた。
 深守を見やると、
「………いや、いいんだよ。ありがとうね」
 と、とても嬉しそうに微笑むものだから。
 少しの間だけ、見とれてしまったなんて――言えなかった。
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