お茶と妖狐と憩いの場
「宝物?」後ろから覗き込んだ成希さんが問う。
「……えぇ、宝物」
「見た事ない! 凄く綺麗」
「へー、篳篥よりも小さいんだな」折成さんも覗き込んで言った。「狐からの土産か?」
「そんなところ、です……。でも返ってくるとは思わなかった……から」
 嬉しい気持ちは然る事乍ら、何故綺麗な状態で戻ってきたのか戸惑ってしまう。
「実は儀式の日……寝巻きに着替えさせた後、空砂様から『そいつはしまっておくのじゃ』――と。私、管理役も務めておりました故の奇跡、無事にお返し出来て幸せでございます」
 黄豊さんは、やっぱり見た目に反してにこやかで、愛嬌が良い。それでもって空砂さんの声真似までしてしまうのだから、ふふっと笑みが零れてしまう。
「凄く凄く嬉しいです……。ありがとうございます」
「えぇ」黄豊さんは満面の笑みで頷いた。
「――そういえば、二人はどうして此処へ?」
 折成さんと成希さんを見ながら私は言った。
「お姫様になって! って言いに来たの」
「……まぁ、間違いではないんだが……。もう一ヶ月経つし、聞いて来いと言われてしまってな。里の人達は皆お前待ちだ」
 私は、聞くべきじゃなかった、と手で口を抑えた。二人……いえ、皆からの圧力が直ぐそこまで差し迫っている。
「な、なるべく良い返答はしたいのよ……? でも、でも私……統率する力なんて持ち合わせてないもの。それに深守も起きてくれないし、一人でやっていけるかどうか……」
 私は唸る。
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