お茶と妖狐と憩いの場
「狐婆頼られすぎだろ」
「だ、だって……だって……」
「はいはいお前が狐の事好きなのはわかった残念だな宮守昂枝」
「なんでそこで昂枝が出てくるんですか……っ」
「俺がどうした!!」
 状況を見計らったように突然現れた昂枝に、その場にいた全員が目を見開いた。
「なんでいるの……!」
「ははーんさては俺と結望が一緒なのに嫉妬したか? ま、こいつの隣で狐も寝てるけどな」
 けらけらと折成さんは笑う。
 本当に、日常が戻ってきている。
「じゃかあしいわ! ったく……俺も村と里を行き来する身だからな。居てもおかしくはないだろう」
 昂枝はその場にドカッと胡座をかくと、折成さんを睨みつけた。
 折成さんは「おー怖い」と舌を出す。
 そして私の方を向いて言った。
「まっ良いじゃねぇか。皆から期待されてんなら、応えてやれよ。なんなら、村と鬼族どっちも統べてしまう勢いでどーんとやっちまえ!」
「えぇぇ……っ」
「結望姉、どーんとやっちゃえ!」
「私も、結望様についていきますよ」
「き、黄豊さんまで……」
 二人に目を輝かせながら見詰められて、私は恐縮してしまう。本当に、私なんかで良いのだろうか。……後悔、しないだろうか。
 だけど、このまま有耶無耶にし続けるのも良くはない。嫌ですときっぱり伝えるのも、私の様な性格ではできっこないことは自分でもわかりきっている。だったらもう、ここで腹を括るしかない……気がする。
「な、なら……。まずは……お、お試しっていうのは……どうでしょうか」
 小さく手を挙げて、私はか細く言った。
 ぷるぷると震えながら宣言したものだから、鬼族の三人はきょとんとした顔でこちらを凝視した。
 そして、一定の間が開いた末、
「……っ! やったー! 結望姉がお姫様だー!」
「やりましたね、成希さん!」
 成希さんと黄豊さんは両手を合わせて喜んだ。
「早速皆さんにも伝えに行きましょう」
「ほらほら、結望姉も立って!」
 二人は喜色満面の笑みでそう言うと、こうしちゃいられない、と勢い良く立ち上がった。
 それとほぼ同時に、私もひょいっと立たされてしまう。終いには両脇をがっちりと抱えられてしまい、逃げる術を無くしてしまった。
「お、おおおお試しなんだけど……っ」
「それでも嬉しいの!」成希さんは手舞足踏しながら言った。
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