お茶と妖狐と憩いの場
そしてあれよあれよと座敷から連れ出されてしまい、里の住居が建ち並ぶ所まであっという間に辿り着いてしまう。
成希さんが「おーい」と鬼族達を呼ぶ。
里の人達は、成希さんの呼び声に反応すると、ぞろぞろと集まり始めた。内心、どうしようどうしようと冷や汗が止まらなかったけれど、私がやって来たという事は大凡の結果が見えている。皆はそわそわしながら言葉を待った。
すぅ、と成希さんは息を吸い込むと、
「結望姉お姫様なるって!」
その一言で辺りが大歓声に包まれた。
「あ、あの……でも、お試し、……お試しですから……」
私は焦りながら言うけれど、全然耳を傾けてくれない。やっぱり里を統一する事なんて、私には無理なのではないか。
「はははっ、こりゃ誰も聞いてないな」
隣で昂枝は笑う。
他人事だと思って、と膨れっ面をしてみるけれど、昂枝は周りを見渡しながら、感慨深そうに頷いた。
「やっぱり……結望は引き篭ってるより、皆といる方が生き生きしてる」そう言いながら、昂枝は私の頭をぽんっと撫でる。
「ある意味で良い誕生日になったかもな」
「……そういえば、誕生日かも」
「え、忘れてたのか?」
「あ……、なんか……当たり前の様に十七になったなって、ふわっと思ってたけど……。そっか……って」
ここ最近ずっと慌ただしかったから、忘れるというか、気にしないというか、無理もなかった。
私達の会話に気づいたのか、成希さんが目を輝かせながら言う。
「え? 結望姉お誕生日なの? おめでとー!」
「うん、ありがとう」
「結望さん誕生日だとよ」
「あら、おめでたいわね」
近くにいた老夫婦も私の誕生日の話題になる。
どんどん伝染していって、皆が祝福してくれた。
今日、産まれて初めて、誕生日を沢山の人にお祝いされているかもしれない。
それは全くもって慣れない事だけれど、とても嬉しい。
私はこれまでに無いくらい笑っている。私が生きる意味も、此処にあったんだ。そう思えるくらいに。
だけど、だけど……深守はまだ眠ったまま――。
(本当は一番最初にお祝いして欲しかったな……なんて)
派手で、陽気で、場を明るくするのが得意な彼に。何もかも終わった後の誕生日は、今まで以上に喜ばしい、記念すべき日だから。
後でしっかり伝えないと、私は深守に思いを馳せる。
来年はお祝い出来るかな。今からそんな風に考えてしまうのだった。
成希さんが「おーい」と鬼族達を呼ぶ。
里の人達は、成希さんの呼び声に反応すると、ぞろぞろと集まり始めた。内心、どうしようどうしようと冷や汗が止まらなかったけれど、私がやって来たという事は大凡の結果が見えている。皆はそわそわしながら言葉を待った。
すぅ、と成希さんは息を吸い込むと、
「結望姉お姫様なるって!」
その一言で辺りが大歓声に包まれた。
「あ、あの……でも、お試し、……お試しですから……」
私は焦りながら言うけれど、全然耳を傾けてくれない。やっぱり里を統一する事なんて、私には無理なのではないか。
「はははっ、こりゃ誰も聞いてないな」
隣で昂枝は笑う。
他人事だと思って、と膨れっ面をしてみるけれど、昂枝は周りを見渡しながら、感慨深そうに頷いた。
「やっぱり……結望は引き篭ってるより、皆といる方が生き生きしてる」そう言いながら、昂枝は私の頭をぽんっと撫でる。
「ある意味で良い誕生日になったかもな」
「……そういえば、誕生日かも」
「え、忘れてたのか?」
「あ……、なんか……当たり前の様に十七になったなって、ふわっと思ってたけど……。そっか……って」
ここ最近ずっと慌ただしかったから、忘れるというか、気にしないというか、無理もなかった。
私達の会話に気づいたのか、成希さんが目を輝かせながら言う。
「え? 結望姉お誕生日なの? おめでとー!」
「うん、ありがとう」
「結望さん誕生日だとよ」
「あら、おめでたいわね」
近くにいた老夫婦も私の誕生日の話題になる。
どんどん伝染していって、皆が祝福してくれた。
今日、産まれて初めて、誕生日を沢山の人にお祝いされているかもしれない。
それは全くもって慣れない事だけれど、とても嬉しい。
私はこれまでに無いくらい笑っている。私が生きる意味も、此処にあったんだ。そう思えるくらいに。
だけど、だけど……深守はまだ眠ったまま――。
(本当は一番最初にお祝いして欲しかったな……なんて)
派手で、陽気で、場を明るくするのが得意な彼に。何もかも終わった後の誕生日は、今まで以上に喜ばしい、記念すべき日だから。
後でしっかり伝えないと、私は深守に思いを馳せる。
来年はお祝い出来るかな。今からそんな風に考えてしまうのだった。