お茶と妖狐と憩いの場
この紀江が亡くなってからの事を思い返しながら、深守は忸怩たる思いを叫んだ。年甲斐もなく大粒の涙を沢山流しながら、紀江に向かって深々と頭を下げる。
謝罪の言葉をどれだけ述べても全然足りない。
カッコイイ神様を演じてみても、二人の為にしてやれた事など殆どない。
深守は過去を振り返る度に猛反省した。
「アタシは出来損ないの化け狐なのよ」
そう、出来損ないで、生きている意味のない狐。身体を大きく変化させたところで力なんて皆無に等しくて、鍛えたところでこの有様だ。
こんなの、嘘吐きで裏切り者の狐と同じ、もしくはそれ以下の存在としか思えない。
そう言って、泣きながら自分を卑下する深守の姿に、紀江は慌てながら、
「待って……! どうしてそんな事言うの……? 深守さんはちゃんと私達を守ってたわ。一人で寂しい時傍に居てくれたのは間違いなく貴方よ、結望だって、それは同じはずよ……!」
と深守の腕を掴んで言い返した。
「そんなの……、些細なこと過ぎるわ」それでも深守は首を振り続ける。
「だからよ。……だから、嬉しいの。気づいてよ、私達の思いにも……」
「……っ」
「だって何より、あの子を愛してくれていたじゃない。貴方は、誰よりもあの子の事を一番に思っていたわ……。自分の命を顧みずに結望を救った貴方は、カッコイイだけじゃ言い表せない。自信を持って欲しいの――貴方は間違いなく“深守”だったと」
両手で深守の頬を覆う。伝ってくる涙を指で拭いながら、紀江は「貴方は素敵よ」と呟く。
ああ言えばこう言う普段の精神状態ではない彼を見て、紀江は思った。
この人は抱え込み過ぎていたんだと。
紀江自身、記憶を消されていたから鬼族の事も何も知らなかった。死ぬその時まで知らなかった。けれど彼は、全ての事を知った上で、我が子を助け出そうとしてくれた。
彼の行動のおかげで、鬼族や、宮守の人と協力関係になれた上、結果的にはどちらも救う事が出来た。
それは絶対に誇って良い結果だ。
それに気づいて欲しくて、紀江は真剣な表情を浮かべる。先程までの無邪気さとは一転、一人の母としての顔になった。ただじっと見つめ合って、紀江は深守の頭を撫でた。深守は女性の前で泣いて、更には慰められているなんて、と羞恥心を抱いたが、紀江はそんな事気にもとめず優しく微笑むだけだ。よしよし、とあやすように深守の涙を受け止める。
謝罪の言葉をどれだけ述べても全然足りない。
カッコイイ神様を演じてみても、二人の為にしてやれた事など殆どない。
深守は過去を振り返る度に猛反省した。
「アタシは出来損ないの化け狐なのよ」
そう、出来損ないで、生きている意味のない狐。身体を大きく変化させたところで力なんて皆無に等しくて、鍛えたところでこの有様だ。
こんなの、嘘吐きで裏切り者の狐と同じ、もしくはそれ以下の存在としか思えない。
そう言って、泣きながら自分を卑下する深守の姿に、紀江は慌てながら、
「待って……! どうしてそんな事言うの……? 深守さんはちゃんと私達を守ってたわ。一人で寂しい時傍に居てくれたのは間違いなく貴方よ、結望だって、それは同じはずよ……!」
と深守の腕を掴んで言い返した。
「そんなの……、些細なこと過ぎるわ」それでも深守は首を振り続ける。
「だからよ。……だから、嬉しいの。気づいてよ、私達の思いにも……」
「……っ」
「だって何より、あの子を愛してくれていたじゃない。貴方は、誰よりもあの子の事を一番に思っていたわ……。自分の命を顧みずに結望を救った貴方は、カッコイイだけじゃ言い表せない。自信を持って欲しいの――貴方は間違いなく“深守”だったと」
両手で深守の頬を覆う。伝ってくる涙を指で拭いながら、紀江は「貴方は素敵よ」と呟く。
ああ言えばこう言う普段の精神状態ではない彼を見て、紀江は思った。
この人は抱え込み過ぎていたんだと。
紀江自身、記憶を消されていたから鬼族の事も何も知らなかった。死ぬその時まで知らなかった。けれど彼は、全ての事を知った上で、我が子を助け出そうとしてくれた。
彼の行動のおかげで、鬼族や、宮守の人と協力関係になれた上、結果的にはどちらも救う事が出来た。
それは絶対に誇って良い結果だ。
それに気づいて欲しくて、紀江は真剣な表情を浮かべる。先程までの無邪気さとは一転、一人の母としての顔になった。ただじっと見つめ合って、紀江は深守の頭を撫でた。深守は女性の前で泣いて、更には慰められているなんて、と羞恥心を抱いたが、紀江はそんな事気にもとめず優しく微笑むだけだ。よしよし、とあやすように深守の涙を受け止める。