お茶と妖狐と憩いの場
今の乱れた心の深守には、彼女の行動が全て身に染みた。
深守は紀江のあたたかさに包まれて、ゆっくりと冷静さを取り戻す。深守は深呼吸をするともう一度だけ謝った。紀江も頷いて肯定する。
「結望は……、許してくれるかしら」
「許すも何も、貴方の帰りを待ち続けているわ」
「……結望」
結望に会いたい。
幼き頃沢山見せてくれた愛らしい笑顔を。
己の前で顔を赤くしたり、優しく微笑んでくれるあの子を――またこの目で見たい。
その輪に入りたい。
深守は願ってしまった。
「アタシ……、結望に会いたい。早くあの子の所へ戻って、沢山抱き締めるの。それで……」
泣きながらも笑顔を作って見せる。
「もう一度愛してるって、伝えたい」
「……えぇ」
紀江はその笑顔に応えるように、今度は大きく頷いた。
「そうと決まれば早く動きましょう」ぽんと手のひらを叩く。
「でも、こんな所からどうやって目覚めるんだい?」
「気合いよっき・あ・い!」
両手でこぶしを握ると、紀江はぴょんっと兎の様に跳ねる。
「無茶苦茶ね……」
「だから、もう……何度も言ってるけど、深守さんなら大丈夫よ! 私を信じてよ」
「えぇ、信じるわ」
紀江に手を引かれながら、深守は草花の中を進んで行く。
「――ねぇ、深守さん……。最後だから言うんだけど」
紀江は立ち止まり、振り返る。
そしてそのまま、深守の胸へ飛び込んだ。
「貴方に出会えて良かった……。私、ずっと、ずっと一人で怖かったの。……本当は凄く寂しかったの。羅刹様にも会わせて貰えなくて、不安で……でも貴方のおかげで……結望にも、父代わり、じゃないけど……楽しいひとときを与えられたんじゃないかって。あの時は毎日がね、明るくて、きらきらしてたのよ」
頬を伝う涙を隠すように、紀江は深守に蹲る。深守は抱き締め返し、彼女の背中を摩る。身に纏う黄色い着物が、紀江の涙で芥子色に染まっていくのを見るのはいつぶりだろうか。今度は自分が慰める番だ、と深守は彼女の言葉に耳を傾けながら、あの日の事を思い出した。
深守は紀江のあたたかさに包まれて、ゆっくりと冷静さを取り戻す。深守は深呼吸をするともう一度だけ謝った。紀江も頷いて肯定する。
「結望は……、許してくれるかしら」
「許すも何も、貴方の帰りを待ち続けているわ」
「……結望」
結望に会いたい。
幼き頃沢山見せてくれた愛らしい笑顔を。
己の前で顔を赤くしたり、優しく微笑んでくれるあの子を――またこの目で見たい。
その輪に入りたい。
深守は願ってしまった。
「アタシ……、結望に会いたい。早くあの子の所へ戻って、沢山抱き締めるの。それで……」
泣きながらも笑顔を作って見せる。
「もう一度愛してるって、伝えたい」
「……えぇ」
紀江はその笑顔に応えるように、今度は大きく頷いた。
「そうと決まれば早く動きましょう」ぽんと手のひらを叩く。
「でも、こんな所からどうやって目覚めるんだい?」
「気合いよっき・あ・い!」
両手でこぶしを握ると、紀江はぴょんっと兎の様に跳ねる。
「無茶苦茶ね……」
「だから、もう……何度も言ってるけど、深守さんなら大丈夫よ! 私を信じてよ」
「えぇ、信じるわ」
紀江に手を引かれながら、深守は草花の中を進んで行く。
「――ねぇ、深守さん……。最後だから言うんだけど」
紀江は立ち止まり、振り返る。
そしてそのまま、深守の胸へ飛び込んだ。
「貴方に出会えて良かった……。私、ずっと、ずっと一人で怖かったの。……本当は凄く寂しかったの。羅刹様にも会わせて貰えなくて、不安で……でも貴方のおかげで……結望にも、父代わり、じゃないけど……楽しいひとときを与えられたんじゃないかって。あの時は毎日がね、明るくて、きらきらしてたのよ」
頬を伝う涙を隠すように、紀江は深守に蹲る。深守は抱き締め返し、彼女の背中を摩る。身に纏う黄色い着物が、紀江の涙で芥子色に染まっていくのを見るのはいつぶりだろうか。今度は自分が慰める番だ、と深守は彼女の言葉に耳を傾けながら、あの日の事を思い出した。