お茶と妖狐と憩いの場
「――おかえりなさい、深守」

 待ちに待った言葉を口にした。
 ぽろぽろと頬を伝う涙を、深守は優しく拭ってくれた。
 深守は「ただいま、結望。それから……誕生日おめでとう」と、眉を八の字にさせながらも微笑み返す。
 私はこれまで以上に力強く、深守の背中に腕を回して抱き締める。深守も私を強く強く抱き締めた。
 これをどれだけ待ちわびた事だろう。
「っ……もう、一生目覚めないかと……、おもっ……。あぁっよかった……」
「えぇ、本当に良かった……。アタシも、アンタをずっと抱き締めたかった……この手で、この身体で……、諦めなくて良かったわ……っ」
 少し離れると、短くする理由が無くなり、長く伸びた私の髪の毛を、深守はそっと掬い上げ唇を落とした。
「……やっぱり、アンタは長い方が似合うわよ」
 彼は、私が短く整えていた理由を知っているからか、感慨深そうに頭を撫でた。その時、鼓動が更に早まった。どきんどきんと、痛みを覚える程に。
 心做しか、自分の頬が火照っている気がして、頭を下げた。そして、目覚めた嬉しさからだろうか、空気感も相まって、口からつらつらと言葉が溢れ出した。
「深守、私……、深守の事が大好きです」
「結望……?」
「こんなにもお慕いしているのに、叶わぬ願いなのかと……。感謝の言葉や、思いの丈を伝えることなく、終わってしまうのかと……どうしたら良いのか、ずっと考えていました」
「…………」
「深守にとって、私がそういった対象として愛している……と、仰っていた訳ではないと思います。ですが、私は……貴方の事を心から愛しています。愛してしまったのです。もう、どうしたら良いのかわかりません……。好きで好きで堪らないのです」
 ここまで言い切って、自分がとても恥ずかしい事を宣言してしまったと自覚した。いや、最初から愛してる宣言はしていたの……だけれど。
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