お茶と妖狐と憩いの場
―――ということで、夕飯の支度に取り掛かる。
「深守はご飯も作れるんですか…?」
私はふと聞いてみる。
「あぁ…えぇと、実は…ご飯ってのは作ったことがなくて…ねぇ。アタシみたいなのは食べなくても生きていけるもんだから、ついその場の勢いで言ってしまったよ」
申し訳なさそうに、頬をかきながら深守は言った。どうやら神様達に食事は必要ないらしい。人間や動物の類ではないのは理解出来る為、そこまで驚きはしないけれど、不思議な感覚だった。
「…あ、全然大丈夫ですよ。なんだか深守、何でも出来ちゃいそうな雰囲気を感じたのでどうかなと。…お洗濯とかもやってくださいましたし」
「あれは…見様見真似ってやつね」
「見様見真似…?」
「ふふふっそう、見様見真似」
「……じゃあ、ご飯もすぐ出来るようになっちゃうかもですね。あれ、でもご飯食べなくても平気…なら、覚える必要はないですね…? でも…、昨日の夜も今日の朝も、一緒にご飯を食べていたような…」
私は思い出して混乱する。
それを見て深守はクスッと笑った。
「絶対食べないってことはないのよ。ただ、食べなくても生きていけるからそこまで気にしたことがない…ってだけで。だからね、教えてくれる?」
「なるほど…ふふっ、わかりました」
私は深守に包丁を手渡すと、まず最初に切り方を教えていく。
「――えっと、簡単なものから…今日は一番の色として人参を使います。こうやって……」
人参を縦に持つと、包丁でスルッと皮を剥いて見せた。途中で交代し、深守がゆっくりと剥いていく。やっぱり上手だ。難なくこなしてしまい、「できたわ」と見せてくれる。
「お見事です。とても綺麗…。えっと、次は輪切りをしていきましょう。お野菜とか、丸い形のものを一定の大きさで切ることを輪切りって言います。知っていたらすみません」
今度はまな板の上に、人参を横向きに置くと、トントンと包丁を鳴らした。
「ただ切るだけなので初歩すぎるかもしれませんが…」
「なるほど、やってみるわ」
深守は私が切った人参の大きさに合わせてサクッと切込みを入れた。それを繰り返すこと数回。とても綺麗な輪切りが沢山出来た。
「端と端は食べないので処分で構いません。…あ、それからこんなのも…」
私は輪切りから更に切り込みを入れていく。時間がある時にやるちょっとした工程。
「…へぇ、輪切り…? からそんな可愛らしいものができるんだねぇ」
「…はい。桜とか作れちゃいます。添えるとかわいくて、ついついやってしまうんですよね。朱色が映えるというか…」
私は手のひらにそれを載せると、深守の方を向いて見せた。
「ふふ、結望っぽいわね」
「…へ?」
「深守はご飯も作れるんですか…?」
私はふと聞いてみる。
「あぁ…えぇと、実は…ご飯ってのは作ったことがなくて…ねぇ。アタシみたいなのは食べなくても生きていけるもんだから、ついその場の勢いで言ってしまったよ」
申し訳なさそうに、頬をかきながら深守は言った。どうやら神様達に食事は必要ないらしい。人間や動物の類ではないのは理解出来る為、そこまで驚きはしないけれど、不思議な感覚だった。
「…あ、全然大丈夫ですよ。なんだか深守、何でも出来ちゃいそうな雰囲気を感じたのでどうかなと。…お洗濯とかもやってくださいましたし」
「あれは…見様見真似ってやつね」
「見様見真似…?」
「ふふふっそう、見様見真似」
「……じゃあ、ご飯もすぐ出来るようになっちゃうかもですね。あれ、でもご飯食べなくても平気…なら、覚える必要はないですね…? でも…、昨日の夜も今日の朝も、一緒にご飯を食べていたような…」
私は思い出して混乱する。
それを見て深守はクスッと笑った。
「絶対食べないってことはないのよ。ただ、食べなくても生きていけるからそこまで気にしたことがない…ってだけで。だからね、教えてくれる?」
「なるほど…ふふっ、わかりました」
私は深守に包丁を手渡すと、まず最初に切り方を教えていく。
「――えっと、簡単なものから…今日は一番の色として人参を使います。こうやって……」
人参を縦に持つと、包丁でスルッと皮を剥いて見せた。途中で交代し、深守がゆっくりと剥いていく。やっぱり上手だ。難なくこなしてしまい、「できたわ」と見せてくれる。
「お見事です。とても綺麗…。えっと、次は輪切りをしていきましょう。お野菜とか、丸い形のものを一定の大きさで切ることを輪切りって言います。知っていたらすみません」
今度はまな板の上に、人参を横向きに置くと、トントンと包丁を鳴らした。
「ただ切るだけなので初歩すぎるかもしれませんが…」
「なるほど、やってみるわ」
深守は私が切った人参の大きさに合わせてサクッと切込みを入れた。それを繰り返すこと数回。とても綺麗な輪切りが沢山出来た。
「端と端は食べないので処分で構いません。…あ、それからこんなのも…」
私は輪切りから更に切り込みを入れていく。時間がある時にやるちょっとした工程。
「…へぇ、輪切り…? からそんな可愛らしいものができるんだねぇ」
「…はい。桜とか作れちゃいます。添えるとかわいくて、ついついやってしまうんですよね。朱色が映えるというか…」
私は手のひらにそれを載せると、深守の方を向いて見せた。
「ふふ、結望っぽいわね」
「…へ?」