お茶と妖狐と憩いの場
深守は私の手のひらから人参を摘む。
「カワイイってコトよ」
「…っ、恥ずかしい…です」
私は手で顔を覆った。昔お母様にかわいいと言われたことがあるのは覚えているけれど、異性に…しかも神様に言われるなんてこの人生で一度も考えたことがなかった。
(昂枝もそんなこと、言う人ではないし…)
火照った顔を元に戻そうと手で仰ぐ。
「…美味しいわね、人参」
ぽりぽりと口の中を鳴らしながら深守は呟いた。
私はそれを見て「あっ…」と声を上げるが、料理に興味深そうな深守を見ていたら、何だか初心に戻ったような気持ちになってきた。自分もこんな感じ、だったのだろうか。
「深守。今度は自分で桜、作ってみませんか?」
私は提案してみる。深守も「頑張ってみるわ」と包丁を握りしめると、丁寧に、丁寧に切り込みを入れていった。
そんな風にゆっくりと着実にご飯を作っていく。
深守は先程と同じように、竈の火の番をしながら味噌汁作りを覚えていた。というより、もう覚えてしまった。同じ要領で他の野菜も渡したらすぐ終わらせてしまったし、雰囲気で…と言っていたが硬いものからちゃんと火に通していた。何も言わずともやはり出来てしまった。
(流石神様…?)
「……結望、お味噌は最後でいいのよね?」
「あ、はい。火から下げた後にお願いします」
深守は鼻歌交じりに残りもこなしていく。その姿は初めて料理する人には見えないくらい手際が良かった。
私もお魚を焼きつつ、炊き上がったご飯を茶碗によそう。
「…結局、深守に教えることはあまりありませんでした」
「おや? アタシは結望から沢山学んだけどねェ」
お椀に味噌汁を注ぎながら微笑む深守はやっぱり楽しそうだ。
「…魚もいい香りね」
「はい、いい感じに焼けました」
お皿に焼いた魚を盛り付ける。大根をおろすか迷ってしまうけれど、明日にして今日は辞めておくことにした。しかし何かが足りない。
「…あとは、お漬物かしら…?」
「ここよ」
「…ありがとうございます」
必要なものがお膳に揃ったところで、今夜の夕飯が完成――。
「カワイイってコトよ」
「…っ、恥ずかしい…です」
私は手で顔を覆った。昔お母様にかわいいと言われたことがあるのは覚えているけれど、異性に…しかも神様に言われるなんてこの人生で一度も考えたことがなかった。
(昂枝もそんなこと、言う人ではないし…)
火照った顔を元に戻そうと手で仰ぐ。
「…美味しいわね、人参」
ぽりぽりと口の中を鳴らしながら深守は呟いた。
私はそれを見て「あっ…」と声を上げるが、料理に興味深そうな深守を見ていたら、何だか初心に戻ったような気持ちになってきた。自分もこんな感じ、だったのだろうか。
「深守。今度は自分で桜、作ってみませんか?」
私は提案してみる。深守も「頑張ってみるわ」と包丁を握りしめると、丁寧に、丁寧に切り込みを入れていった。
そんな風にゆっくりと着実にご飯を作っていく。
深守は先程と同じように、竈の火の番をしながら味噌汁作りを覚えていた。というより、もう覚えてしまった。同じ要領で他の野菜も渡したらすぐ終わらせてしまったし、雰囲気で…と言っていたが硬いものからちゃんと火に通していた。何も言わずともやはり出来てしまった。
(流石神様…?)
「……結望、お味噌は最後でいいのよね?」
「あ、はい。火から下げた後にお願いします」
深守は鼻歌交じりに残りもこなしていく。その姿は初めて料理する人には見えないくらい手際が良かった。
私もお魚を焼きつつ、炊き上がったご飯を茶碗によそう。
「…結局、深守に教えることはあまりありませんでした」
「おや? アタシは結望から沢山学んだけどねェ」
お椀に味噌汁を注ぎながら微笑む深守はやっぱり楽しそうだ。
「…魚もいい香りね」
「はい、いい感じに焼けました」
お皿に焼いた魚を盛り付ける。大根をおろすか迷ってしまうけれど、明日にして今日は辞めておくことにした。しかし何かが足りない。
「…あとは、お漬物かしら…?」
「ここよ」
「…ありがとうございます」
必要なものがお膳に揃ったところで、今夜の夕飯が完成――。