お茶と妖狐と憩いの場
「って、大根だし今日中は無理か。ごめん…」
はっと気づいた想埜は言った。確かに大根のぬか漬けは、半日から一日漬けた方が良いとされる。勿論切り方によって変わってくるとは思うが、私達がいつまで想埜にお世話になるかにもよるはずだ。
「いや、全然。明日また来るだけだよ」
「それはありがたいけど、神社から俺ん家って遠いし往復したら疲れない? 申し訳ないよ」
想埜は小声になりつつ言った。
想埜は滅多と此処から出ない。出たがらないというのもあるが、隠遁しているご両親からもなるべく外に出るなと言われているらしい。昔はご両親と暮らしていたみたいだが、大人になった今は自給自足をしながら一人暮らしをしている。なるべく人と関わらず、しかし村から離れすぎない安全な場所で過ごすという決まりがあるといつの日か教えて貰った。
まるで神社から出れない私のようで、だけど全く違う雰囲気を持つ彼はいつしか私の中で憧れになっている。
――こんな前向きな性格になれたらよかった。
私は時々思う。
そもそもどうして私達が知り合い、関係を結んでいるかというと、とても単純だ。
宮守はこの村で妖葬班の次に地位がある。だからと言ってそこまでの権力がある訳ではないけれど。宮守家は神社の維持もそうだが、神主、巫女として、人それぞれ抱える事情に耳を傾け手助けをしているのだ。中には妖葬班も断るような事柄でも引き受けるらしい…ただしなるべくと付け加えろと昂枝に言われた。
つまるところ想埜のご両親からの依頼だった。神社兼、何でも屋に舞い降りた仕事のひとつ。
【想埜の様子を定期的に伺って欲しい】
そんなところだ。想埜がどうして両親と離れ一人暮らしなのかは宮守家だけが知っている。私は勿論知らない。事情を知っているからこその支援の仕方があるのだと言っていたが、実際に他人に話さず完遂するのは簡単に出来る事では無い…と思う。
これだけ口が硬い人達なのだ。私的に宮守の人達はとても優しい人達…という自信があったからこそ、深守の事も素直に話すことができたのだ。あの後すぐ匿う事にしたご両親は仕事と同じ感覚だったのかもしれない。
はっと気づいた想埜は言った。確かに大根のぬか漬けは、半日から一日漬けた方が良いとされる。勿論切り方によって変わってくるとは思うが、私達がいつまで想埜にお世話になるかにもよるはずだ。
「いや、全然。明日また来るだけだよ」
「それはありがたいけど、神社から俺ん家って遠いし往復したら疲れない? 申し訳ないよ」
想埜は小声になりつつ言った。
想埜は滅多と此処から出ない。出たがらないというのもあるが、隠遁しているご両親からもなるべく外に出るなと言われているらしい。昔はご両親と暮らしていたみたいだが、大人になった今は自給自足をしながら一人暮らしをしている。なるべく人と関わらず、しかし村から離れすぎない安全な場所で過ごすという決まりがあるといつの日か教えて貰った。
まるで神社から出れない私のようで、だけど全く違う雰囲気を持つ彼はいつしか私の中で憧れになっている。
――こんな前向きな性格になれたらよかった。
私は時々思う。
そもそもどうして私達が知り合い、関係を結んでいるかというと、とても単純だ。
宮守はこの村で妖葬班の次に地位がある。だからと言ってそこまでの権力がある訳ではないけれど。宮守家は神社の維持もそうだが、神主、巫女として、人それぞれ抱える事情に耳を傾け手助けをしているのだ。中には妖葬班も断るような事柄でも引き受けるらしい…ただしなるべくと付け加えろと昂枝に言われた。
つまるところ想埜のご両親からの依頼だった。神社兼、何でも屋に舞い降りた仕事のひとつ。
【想埜の様子を定期的に伺って欲しい】
そんなところだ。想埜がどうして両親と離れ一人暮らしなのかは宮守家だけが知っている。私は勿論知らない。事情を知っているからこその支援の仕方があるのだと言っていたが、実際に他人に話さず完遂するのは簡単に出来る事では無い…と思う。
これだけ口が硬い人達なのだ。私的に宮守の人達はとても優しい人達…という自信があったからこそ、深守の事も素直に話すことができたのだ。あの後すぐ匿う事にしたご両親は仕事と同じ感覚だったのかもしれない。