お茶と妖狐と憩いの場
 ところ変わって同じ頃、程近くの森で深守は折成と相対していた。
「まーた来たのね。懲りないオ・ト・コ」
 深守は扇子を開くと面倒くさそうに鼻で笑った。また、折成も槍を地面に付けながら睨み付ける。
「…決まり事だからな」
 今にも襲いかかって来そうな威圧を感じた深守は「はぁ…」と溜息をついた。
「アンタ達“鬼族”様の勝手で“罪のない命を奪って”どうするつもりだい」
「はんっ知った事か。俺らだって必死なんだよ。そもそもたかが人間の一人や二人大した事ねぇだ…」
 言い終える前に深守は駆ける。
「それ以上言ったら、それこそ“アンタ”を“アタシ”が殺しちゃうわよ」
 折り畳まれた扇子を折成の首元にやると、深守は折成を睨み返した。
(堪ったもんじゃないわ。結望の命は一つだけだと言うのに。それに今までだって……あぁもう! これだから鬼族はニガテなのよっ)
 深守は怒りを抑えることが出来なかった。が、何とか平静を保ち続ける。
 結望にこの事が知られてはならない。自分達の中で完結させなければ、出なければあの子をもっともっと悲しませることになる。
「良い? アンタ達のやってる事はおかしいの。早く気づきなさいよ」
「別に俺らは…間違ってねぇ」
「間違ってるわよ。鬼族にも事情があるのはわかるけどサ。正直何か他にも方法があるはずじゃない?」
「…ねぇよ」
「有るわよ」
「ねぇよ! だから近いうちあいつを連れてくって言ってんだ」
「それはさせないわよ。絶対に」
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