お茶と妖狐と憩いの場
「僕、波柴(はしば)海祢と言います。想埜とは従兄弟なんです。因みにさっきの海萊は…うちの兄です」
「従兄弟…?」私は口を押えた。成程、合点がいった。
「まさか海萊さんが想埜の従兄弟だったとは…」
 小さな村だ。全然有り得る話なのに驚きを隠せなくなってしまった。確かに、海萊さんと海祢さんは何処と無く雰囲気が似ている。想埜とも瞳の色が近く藍色だ。
「あはは。少しだけ血が繋がってるのにオレなんかより大分凄い人だよね」
「兄弟から見てもそうだよ」
 想埜と海祢さんは笑う。
「…っといけない。また時間があったらよろしくね」
 海祢さんは仕事中だ。きっと一緒にいた二人も向こうで待っていることだろう。何度か会釈をすると走って行った。
「妖葬班の人に知り合いが出来ちゃったな…」
 絶対に近付きたくなかった人達に、しかも想埜の従兄弟と。お兄さんも…。
「嫌だった…?」想埜が心配そうに覗き込む。私は首を横に振った。
「ごめんね、そういうのじゃないんだけどちょっとびっくりしちゃって」
「まぁそんな頻繁に会う訳じゃないし大丈夫だろ」
 昂枝は私の頭にぽんと手を置く。それもそうだ。たまにこうやって会話する程度の関係なんだから何の心配もない。でも海祢さん、あの人は雰囲気が他とは違って見えた。彼も私を見て何か言うわけではなかったし、休日とかだったら皆で顔を合わせてみても…大丈夫な気がした。
 私達もしばらくしたあと想埜と別れ、宮守へと歩みを進めた。
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