お茶と妖狐と憩いの場
 私達はあれから二人で朝になるのを待った。
 深守も「膝元へ来るかい?」と茶化しながら一緒にいることを了承したのもあり。…流石に膝元は断ったけれど。
「深守はこれからどうするの…?」
 なんとなく、気になったことを伺ってみる。
「そうさねぇ…、結望を一人にしない…を徹底する事かしらね」
 枕元に置いてあった扇子を手に取るとぎゅっと握り締め、少しばかり考える素振りを見せながら深守は答える。
「さっき何処にも行かないでと言われちまったし、実際反省もしているのさ。…身勝手な行動だったと」
 口許を隠すように扇子を開く。こうやって扇子で顔を隠す姿ももう見慣れたものだ。
 それに、あまり気にしていなかったが、深守は二種類の扇子を使い分けている。今は、紫色と金箔を掛け合わせた舞扇子。キラキラとした小石が流水のように散りばめられている。まるで深守そのものを表しているような、そんな意匠だ。
 彼はその綺麗な扇子を開いたり、閉じたりと動かす。深守は私がどう思っているか、気にしているようだった。
「…でもっやるべき事、沢山ある…でしょう?」
 早く答えなければ、と慌てて口にする。
「……結望」
「…だから、えっと…さっきのは言葉の綾ってやつで…気にしないでほしくて……。一緒にいれたら私はとても嬉しいけれど……うれっ…ぁ……」
 はっと私は両手で口を覆う。
 勢いに任せた結果、また私は自然告白をしてしまった…。
 体温が急上昇して沸騰しそうになるのを手で扇ぎながら抑えようとするが、きっともう既に耳まで真っ赤だ。
 深守はそれを見て面白くなったようで、楽しそうにアハハと声を出した。深守の壺に嵌ったようだ。
「ハハハッやっぱアタシ、アンタとずっと一緒にいたいわぁ」
 見てて飽きないし、と照れて俯く私を扇子で軽く扇ぎながら言った。
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