お茶と妖狐と憩いの場
「「深守!!」」
「…深守さん!!」
「がはっ」
 刀を抜かれどくどくと血が溢れ出す。口からも出血をし、着物が瞬く間に赤く染っていった。
 膝を折り、その場に崩れ落ちた深守を庇うべく、私達三人は駆け寄った。
「馬鹿狐こんなところで死ぬな!」
 昂枝は叫ぶと、海萊さんの方を向いて構える。想埜も大きく深呼吸をしながら、目の前にいる敵を見据えた。
「深守! 深守っ、お願いだから力を使って…!」
 私は深守を抱き留めて、深守の手を患部へと押さえ叫ぶ。
「本当にお願い、だから…っ!」
「…っは…ぁ……はぁ…。そう、…なるわよね…。少し…、だけ……よ」
 深守は諦めたように呟く。ぐぅ、と苦しそうな声を上げながら自分に力を使った。傷口はかすり傷程に回復するも、少し朧気だ。
「ふぅん…治癒か。珍しいな」
 海萊さんは興味深そうに言う。
「……まだ抵抗する気か?」
 幼馴染である想埜に向かい、彼は刀を真っ直ぐに向ける。下位の者を見下すような瞳は、本来ならば綺麗な藍色に見えるはずが、灰色のように濁って見えた。
「……関係、ありません。今度は…俺が…」
 想埜は震えながらも声を振り絞る。
「………こうして宮守の人間が歯向かう姿を見るのも、そそられるな」
 想埜から昂枝に切っ先を変えながら嘲笑う。
「……………」
「そうだ。宮守のご子息さんよ、一番大事な仕事は忘れてないだろうな」
「…っ、お前」
 昂枝は目を見開きながら狼狽える。
「ははは、俺に隠し事は出来んぞ」
 海萊さんは刀を鞘に収めながら、他の班員に向けて声を出した。
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