お茶と妖狐と憩いの場
私はそれを聞いて、固まってしまう。何の事かちんぷんかんぷんで、訳がわからなくなった。
(迎え…? そもそも、この人は、一体何者なの…? 赤い髪の毛の人なんて身近にいた記憶なんて───)
昂枝とそのご両親以外に良くしてくれる人など私には、“想埜”くらいしかいない。
「行くぞ」
彼は私の手首を勢いよく掴んだ。
誰だかわからない人にいきなり引っ張られ、小さく悲鳴が出てしまう。
「……っ離してください!」
私は自分の中の精一杯を出し、振り切ろうとした。が、それは惜しくも出来ずに終わる。
そのまま体勢を崩してしまい、尻もちを着いた。“痛い”よりも“恐怖”で頭がいっぱいで、なんとなく、逃げなきゃと感じるのに体が動かなくなってしまった。呼吸が浅くなるのも感じ、何とか吸って吐いてを繰り返す。
そんな中、男は私と同じ目線になるようしゃがみ込む。じっとこちらを睨みつけ、何だか物言いたげな表情だ。
数秒の睨めっこの末、「…折成」と不機嫌そうに男は呟いた。
「せつ、な…?」
「そう、俺は折成。名乗っていなかった」
彼は折成と名乗り頭を搔く。面倒くさそうに言うその姿は何処にでもいる青年だった。この状況下で無ければ、無愛想だが礼儀のある男だと感心していると思う。
「わ、私を何処に連れて行くんですか…?」
流れに身を任せて、意を決して聞いてみる。ただし声は震えていた。
「あ~……、それは言えねぇ。理由も…」
折成さんは頭をかきながらはぐらかす。
兎に角と、私を引っ張り上げようと腕を引っ張り上げた。前言撤回、強引なやり方はやはり礼儀がなっていない。
「離して…っ!」
「つべこべ言わずについてこい!」
槍を小さく構えられ身震いした。私なんかに勝ち目など、ない。そう現実を突きつけるような凶器。何より、槍で刺されるのはごめんだと、抵抗する術を失ってしまった。
嫌々引き摺られる形になり、草履が擦れる音が響く。
一体何なのか、この折成という人は。それにこんな時に限って大きな叫び声も出せなく、もどかしくなる。人が少ない環境は好きだけれど、こうなるのなら、近くに人がいればよかったと感じ始める。社は少し離れていて、多少の物音など昂枝達に聞こえるはずもない。私は何も出来ないまま、これから何処へ連れ行かれるのだろうか。
(嫌だ…大人しく誘拐される訳にはいかない……)
「助けて…!」
私は一か八かで精一杯声を出す。だが恐怖に脅えてからか、やはりしっかりとした叫び声にはならず、ただの囀のようになってしまった。
抜け道を歩くと万が一の事があると彼は判断したのか、森の中を割って進んでいく。行こうとしていた森の中、だけど、こんな事は望んでいない。
(迎え…? そもそも、この人は、一体何者なの…? 赤い髪の毛の人なんて身近にいた記憶なんて───)
昂枝とそのご両親以外に良くしてくれる人など私には、“想埜”くらいしかいない。
「行くぞ」
彼は私の手首を勢いよく掴んだ。
誰だかわからない人にいきなり引っ張られ、小さく悲鳴が出てしまう。
「……っ離してください!」
私は自分の中の精一杯を出し、振り切ろうとした。が、それは惜しくも出来ずに終わる。
そのまま体勢を崩してしまい、尻もちを着いた。“痛い”よりも“恐怖”で頭がいっぱいで、なんとなく、逃げなきゃと感じるのに体が動かなくなってしまった。呼吸が浅くなるのも感じ、何とか吸って吐いてを繰り返す。
そんな中、男は私と同じ目線になるようしゃがみ込む。じっとこちらを睨みつけ、何だか物言いたげな表情だ。
数秒の睨めっこの末、「…折成」と不機嫌そうに男は呟いた。
「せつ、な…?」
「そう、俺は折成。名乗っていなかった」
彼は折成と名乗り頭を搔く。面倒くさそうに言うその姿は何処にでもいる青年だった。この状況下で無ければ、無愛想だが礼儀のある男だと感心していると思う。
「わ、私を何処に連れて行くんですか…?」
流れに身を任せて、意を決して聞いてみる。ただし声は震えていた。
「あ~……、それは言えねぇ。理由も…」
折成さんは頭をかきながらはぐらかす。
兎に角と、私を引っ張り上げようと腕を引っ張り上げた。前言撤回、強引なやり方はやはり礼儀がなっていない。
「離して…っ!」
「つべこべ言わずについてこい!」
槍を小さく構えられ身震いした。私なんかに勝ち目など、ない。そう現実を突きつけるような凶器。何より、槍で刺されるのはごめんだと、抵抗する術を失ってしまった。
嫌々引き摺られる形になり、草履が擦れる音が響く。
一体何なのか、この折成という人は。それにこんな時に限って大きな叫び声も出せなく、もどかしくなる。人が少ない環境は好きだけれど、こうなるのなら、近くに人がいればよかったと感じ始める。社は少し離れていて、多少の物音など昂枝達に聞こえるはずもない。私は何も出来ないまま、これから何処へ連れ行かれるのだろうか。
(嫌だ…大人しく誘拐される訳にはいかない……)
「助けて…!」
私は一か八かで精一杯声を出す。だが恐怖に脅えてからか、やはりしっかりとした叫び声にはならず、ただの囀のようになってしまった。
抜け道を歩くと万が一の事があると彼は判断したのか、森の中を割って進んでいく。行こうとしていた森の中、だけど、こんな事は望んでいない。