お茶と妖狐と憩いの場
「………結望」
 彼は視線を私の方へと向けながら、呟いた。私は昂枝の目の前まで来ると、そのまま腰を下ろす。そして外に声が漏れないように気をつけながら、
「……昂枝、聞きたい事が…あるの」
 と意を決して声を出す。
 真正面に映る彼はなんとなく、これから何を言われるか察したようで「…あぁ」とだけ返事をすると、同じように私を静かに見つめ返した。
 目を閉じて深呼吸をする。この言葉が最善なのかはわからないけれど、それ以外に思い浮かばない。
「……昂枝は、私の…味方でいてくれる?」
 昂枝の手を掴むと、私は縋るように呟いた。
 どうか、どうか彼だけは私の味方でいて欲しい。首を縦に振って欲しい。そう思いながら、両手で昂枝の大きな手を包み込む。
「………」
(お願い、だから…)
 怖くて不安でたまらない気持ちが滲み出たのか、自身の手が震えていることに気づく。
 昂枝はそんな私を見て、手を振りほどく代わりに腕を引き寄せ抱き締めた。
「っ…たかえ…」
 今までにされたことないくらい力強く、そして優しく包み込まれてしまった。
 身動きが取れないまま、互いの温もりを確かめ合うように静かな時が流れる。
「────好きだ」
「…っ!?」
 そして、彼は小さく声を漏らした。
 それは、話の流れから逸れていて、唐突な告白。
「……ずっと、ずっと好きだった」
 彼は今にも泣き出しそうな声音で、縋るように私の着物を掴む。
「たか…え…?」
 私は何が何だかわからず混乱してしまう。

 好き―――?
 誰が…? 誰を…?

「この感情は死ぬまで隠し通すつもりだったのに、この感情を持っては駄目だとわかっていたのに…」
 昂枝は私の背中に回した腕に、ぎゅっと力を入れた。
「待って…あの、…昂枝、好き…って……」
「……結望、俺は最低な人間だ。俺は…、俺は……お前の事が好きになってしまったんだ」
「────」
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