溺愛癖のあるストーカーはその分まっ直ぐみたいです。


ねぇ。

ねえってば。

風邪引くよ。

外,すごく雨降ってるよ。

ねえ。

傘ないの。



人間らしい躊躇が喉をつっかえて,その間にすら雨足の強い環境にさらされる細身のからだ。

同じ階の廊下で時々見掛けるから,多分同い年なんだと思う。

って,そんなことはどうでもよくて。

ようやく声をかけてみようと顔をあげると,私はその光景にハッとした。

悲しみを洗い流すかのような,切ない横顔。

ぎゅっと。

可愛くもなんともないビニールの傘を握りしめて,私も生徒玄関を飛び出す。



「っっ。はい!!!」

「ーーえ」

「あっめは……凌ぐものだからね!!!!!」



こんなもの,返さなくていい。

そう無理矢理押し付けた。



「何があったとか,なんでとか知らないけど。おせっかい,受け取ってよっ」

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