雨降って、恋に落ちる



なんで、こんな事になったんだろう?


肩が触れそうな程近い距離にいる彼とは、数分前に初めて話したばかり。


広げられた傘と打ちつける雨音のせいで、まるで世界に二人きりになってしまったんじゃないかと錯覚してしまう。


彼は今、なにを考えているのだろう。


勝手ながら、雨に濡れるのなんてへーきなタイプかと思った。


雨に濡れても走りもせず、気怠げに歩いて帰る姿も、また絵になるんだろうなぁ・・・なんて。


それにしても、この沈黙、どうしよう。


なにか話したほうがいいのかな?


何話せばいいんだろう。


「失恋、したの?」

「え?な、なんで?」


急に話しかけてきたのは彼の方だった。


「顔に書いてある」

「え!?う、うそっ、そんなわかりやすい?」


確かに、一週間前に失恋したばかりだ。


誰にも言わず、密かに好きだった陸上部の松本くんに彼女ができたことを知って、内心酷く落ち込んでいた。


でも、そんなにわかりやすく顔に出てたかな?


空き教室に入った時からすっかり松本くんのことなんて忘れてたんだけどな。

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