遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
 久遠はメインストリートから一歩裏道にある隠れ家的なお店で、人気が高い。
 お店に入ると、すでに来店客で賑わっている。

 店員に案内され、私たちは奥にあるテーブルへと通される。この店はボックス席が多く、他の席から個々の顔が見えないようプライバシーが守られている。

 私たちは、テーブルの上に置かれているメニュー表からそれぞれが食べたいものをチョイスする。今日は金曜日、明日は仕事が休みなので、久しぶりに外で飲むのもアリだろう。私はレモンサワーを、瑠璃はブルーハワイをオーダーする。
 アルコールは注文してすぐテーブルに運ばれてくる。ひとまず先に乾杯を済ませ、お互いアルコールで喉を潤すと、近況を報告し合う。

 瑠璃は、大手生命保険会社の事務員をしている。お互い土日祝日が休日なので、残業などがなければお互い予定が合わせやすいのだ。

「真冬、今度は何の資格を取る予定なの?」

 自宅を出て一人暮らしを始めると、いろいろな出費が重なり、生活だけでやっとだ。
 仕事に役立つ資格を取得していると、資格手当が付くので当然手取りも増える。

「簿記と給与計算、ビジネス会計は学生の頃に取得したから、FP(ファイナンシャルプランナー)かなあ。FPって、生保でも資格取得されている方多いよね?」

 FPは、経理業務以外にも日常生活で役立つお金の知識を学べる資格だ。資格の有無に関わらず、勉強して知識を身につけているだけで、全然違う。

「うん。セールスさんだったら大概三級は持ってるね。私も教えてもらいながら、昨年三級に合格したよ」

「え、すごい! じゃあ私にも教えてよ」

 私はレモンサワーで再び喉を潤した。
 空きっ腹にアルコールが染み渡る。
 瑠璃も同じくブルーハワイをちびりちびりと舐めるように飲んでいる。

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