遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
 浴室で化粧も落とし、シャワーでスッキリすると、酔いも段々冷めてきた。
 髪の毛を乾かしスキンケアもきちんとして、部屋着に着替え寝室へと向かう。

 自分のベッドに潜り込み、今日瑠璃が言っていた言葉の意味を考えた。『敢えて真冬の友達を選ぶって辺りは、あいつの涙ぐましい努力よね』。これって、どういう意味だろう。
 そして玲央の、私に対する最近の態度……

 実は先週、私と玲央は身体の関係を持ったばかりだった。

 一週間前、私はなぜか玲央に同行を頼まれ、一緒に出張することになった。
 日帰りの出張だと思っていたし、本人もそのつもりだったので同行を承諾したけれど、その日はあいにくの悪天候で公共交通機関のダイヤが乱れに乱れ、その日に帰ってくることができなかったのだ。

 ネット検索で宿を探しても見つかるわけもない。
 結局私たちは一夜を過ごすため、ラブホテルで宿泊する羽目になったのだ。

 部屋は広いし綺麗だし、普通のホテルに宿泊するよりも断然快適に過ごせるけれど……
 若い男女が一晩同じ部屋で一緒に過ごすのだ。何かないわけがない。

 私も拒絶しようとすれば、いくらでもできるはずだった。
 玲央にしたって、学生時代から食指が進まない相手に手を出すほど女性関係に困っているはずもない。
 そうたかを括っていた私の完全な判断ミスだった。

 この男と一緒にいてはいけない。
 最初からわかっていたことなのに、それを拒否できなかったのは、私の心の甘えだった。

 一夜だけでもいい。私の勘違いでもいいから、玲央が私のことを好きだと思えるような思い出がほしい。彼女になんてなれなくても、ワンナイトだと割り切ってもらえたら、それでいい。

 私たちは、言葉を交わすこともなく、身体を繋げた。

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