遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
 翌日、玲央に家まで送ってもらったけれど、玲央はそのまま部屋に上がり込み、再び身体を繋げることとなった。

 行為をするのに、肝心な言葉はない。
 私は『セフレ』に成り下がったのだ。

 玲央は私の気持ちを知ってか知らずかわからない。
 言葉はないけれど、私に触れる手は、まるで宝物に触れるかのようにすごく優しかった。

 その日のうちに玲央は帰宅したけれど、日曜日、私は抜け殻のようになり、何も考えられなかった。

 月曜日からは、いつもと変わらないように振る舞っていた。
 でも、私の仕事が終わる頃にいきなり呼び出され、食事に連れていかれたりと、まるで彼女のように扱われた。

 そんな時、玲央にお見合いの話があることを噂で聞いた。

 ああ、やっぱり私は選ばれない。先週のあの一件は、単なる事故だったんだ。土曜日のアレは、金曜日のおまけだと思えばいい。

 大好きだった人と、自分の気持ちを告げることなく最高の一夜を過ごすことができたんだ。それだけで幸せだと思うことにすればいい。
 もし、私が玲央に気持ちを伝えたとして、玲央に勘違い女だと思われたくない。高校時代から今日この日まで、ずっと好きだっただなんて、言えるはずがない。

 それなら、私は自分の気持ちを封印して、あの夜のことは初めてを捧げた思い出として、別の道へと歩んでいこう。

 そう思ったからこそ、私は今まで以上に資格を取得して、転職しようと心に決めたのだ。

 そもそも、この職場を紹介してくれたのは玲央だ。
 内定が決まっていた会社に辞退を申し出てもなお、ここで働きたいと思ったのは、玲央がこの会社に就職することが決まっていたからだ。

 玲央のそばに、いたかった。
 邪な理由で自分の進路を決めてしまったけれど、私もここらでそろそろ軌道修正しなければ……
 私は布団の中で、転職するならどこにしようか考えながら眠りに就いた。

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