遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
「ほら、三十分以内に玲央がここに来るよ。真冬はそんな格好でいいの?」

 そう言って、私に着替えるよう指示をする。

 外出するわけではないので、部屋着から少しはマシな部屋着へと着替えると、今度は化粧をするよう促される。化粧も、会社へ行くときのようにガッツリとはせず、簡単なものだ。
 やる気のない私に、瑠璃は盛大な溜め息を吐くけれど、そんなの知ったことではない。

 なぜここに玲央を呼んだのか、その理由を聞いても「本人から聞きなさい」の一点張りだ。

 私は諦めて、お湯を沸かすためにキッチンへと向かった。
 玲央が来るなら、瑠璃もいることだしお茶くらいは出さないといけないだろう。

 お湯を沸かしている時に、インターホンが鳴る。玄関に向かったのは、もちろん瑠璃だ。
 玄関先で二人が何やら口論しているけれど、その内容までは聞き取れない。口論というよりも、瑠璃が玲央へ対して一方的に何か言っているようだ。

 そして、二人がリビングに入ってくると、瑠璃は自分の荷物を持って、部屋を出ようとしているのでわたしはその腕を掴んだ。

「ちょっと瑠璃!? 何で帰ろうとするのよ」

 私が必死になって引き止めるも、瑠璃はニヤリと笑うのみ。

「あなたたちは圧倒的に言葉が足りていない。きちんと話し合いなさい。それから玲央、真冬を泣かせたら承知しないわよ」

 そう言って、瑠璃は部屋を後にした。

 何のことかわからない私は、この場に立ち尽くしている。瑠璃に呼び出された玲央も、また然り。
 玄関のドアが閉まる音がして、玲央が玄関へと向かった。一緒に出て行くのかと思いきや、何と玲央は施錠をして戻って来た。

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