遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
 他人の恋愛のいざこざに巻き込まれて嫌な思いをするくらいなら、自衛すればいい。当時の私は、見た目を欺くことで、自分の身を守る術を身に付けた。
 瑠璃は、同じ中学からの進学で、当時は唯一私の素顔を知る人間だった。

「強烈な見た目に化け物じみた成績、最初はガリ勉していて青春を謳歌しないなんて勿体ないって思ってた。だけど、現国の授業のノートを偶然見る機会があってさ。真冬のノート、めちゃくちゃ見やすくて、わかりやすくて。あの時、俺は真冬のことを尊敬したんだ」

 私は人にノートを見せたり貸したりすることはなかったので、多分授業の後でノートを提出しなければならなかった時にでも、偶然中身を見たのだろう。

「見た目のことをディスられたりしても、ガリ勉だと陰でいろいろ言われても、真冬は絶対にブレたりしなかった。そんな真冬のことが気になって、好きになっていた。けれど、当時俺が告白したとしても、逆に迷惑を掛けてしまうと思ったんだ」

 たしかに当時も今も、玲央は女の子にモテモテだった。
 もし仮にそういう関わりではなくても、何かしらの接点があったとしたら、女子生徒から睨まれていただろう。それが嫌で、我が道を貫いていたのだ。

 私の表情を窺いながら、玲央は言葉を選んで口を開く。

「どうやって真冬と接点を作っていいかわからなくて、瑠璃に相談したんだけど、いつの間にか俺たちが付き合っているって噂が立っていたんだ」

 たしか瑠璃と玲央が親しくなったのは、あの日の放課後、私のことを庇ってくれた後だ。

「噂を否定しようとしたけれど、真冬の気持ちが知りたくて、もし俺に少しでも気持ちがあるなら、嫉妬してくれたらと思って、噂を否定しなかったんだ。瑠璃はそんな俺の気持ちを知って、面白がって彼女役を買って出てくれたんだ」

 二人が付き合いだした噂が流れてから、高校を卒業するまでの間、二人はずっと一緒だった。まさか瑠璃は、その当時から私の気持ちを知っていた……?

< 24 / 28 >

この作品をシェア

pagetop