遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
「真冬に悪い虫が付かないように、真冬の一番近くにいる人間のそばで見守っていた。今だから言えるけど、瑠璃を含め、当時噂になっていた女の子たちとは付き合っていなかったよ」

 そんなことを言われて、はいそうですかと信じられるはずがない。

「そんな……、信じられないよ。大学に入ってからも、私が親しくなった女の子と……」

 私の言葉に、玲央は即座に言葉を重ねた。

「うん。だからそれも、真冬に彼氏ができないよう見張ってもらうために言い寄っていた。中には、本気で俺と付き合おうって言ってきた子もいたから、その時点でその子とは切れたけど、基本的に俺はだれとも付き合っていたつもりはない」
 そんなこと……

 私は信じられない思いで、首をずっと横に振っていた。

 言葉なんて出てこない。
 あんなに陰キャに徹していた私のどこが、玲央の心を掴んだのか……

「出会った頃から、ずっと『自分』っていうものをしっかり持っている、ブレない真冬のことが好きだった。だから就活で、俺の手の届かないところに行ってしまうんじゃないかって、気が気じゃなくて、親父の会社のバイトを紹介したんだ。本命の会社に内定もらったって聞いて、最後の賭けだった。もしこれで、そっちを蹴ってうちに来てくれたなら、絶対に真冬を手に入れるって心に決めて。真冬に認めてもらえるよう、仕事を死ぬ気で頑張った」

 玲央の言葉が心に沁みる。
 ちゃんと私のことを見ていてくれた。そのことに心を打たれた。

 決して私のことを見てくれない、私のことを付き合う彼女の引き立て役にしている悪い男だとずっと思っていた。
 そう思わないと、私の心は壊れてしまいそうだった。

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