遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
 玲央のことが好きだと認めてしまうのが怖かった。
 自分の予想していなかったことを次々とカミングアウトしていく玲央に、私はパニックを起こしそうだ。
 そんな私に玲央は、信じられないかもしれないけれどと前置きをして、爆弾発言をした。

「出張の時、思わぬハプニングで一夜を共に過ごすことになったけど、俺、真冬以外にあんなことしたことないから」

 あんなこととは、一夜の過ちだと思っていたあの出来事のことだろう。
 思い出しただけで、私の顔が一気に熱くなる。

「真冬にとって、俺は『最低な男』のイメージしかないかもしれない。あの夜、気持ちを伝えず先に身体を繋げてしまったことは、本当に申し訳なく思っている。本当にごめん。でも、俺はいい加減な気持ちで真冬のことを抱いたんじゃない」

 玲央はそう言うと、私の手を握った。そうしてその手を自分の胸に押し当てる。玲央の心拍が、直に私のてのひらへと伝わってくる。
 その鼓動は、恐ろしいくらいに速い。私の鼓動と変わらないくらいのスピードで脈打っている。

「……お……こ……、す……よ」

 私も玲央のことが好きだよと呟いたつもりが、声が上擦って上手く言葉にならない。
 玲央はそんな私に優しく微笑んだ。

「真冬、俺のことどう思ってる?」

 その言葉を聞いて、私の眼から涙がこぼれ落ちる。

「玲央……、私も学生の頃から、ずっと好きだよ」

 私の言葉を聞いた途端、玲央は私の腕を強く引っ張った。そしてあっという間に私は玲央によって抱きしめられていた。

「やっと……、やっと捕まえた」

 私たちはしばらくの間こうしてお互いの存在を、お互いの体温を確かめ合った。
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