遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

エピローグ

 玲央と私のために淹れたコーヒーは、すっかり冷めてしまっていた。

 思いを通わせ合った私たちは、お互いが疑問に思っていたことを尋ねた。

「高校の頃、あんなにビジュが強烈だったのに、大学に入ってからメガネやめたのはどうして?」

 という玲央の問いに、私は苦笑いを浮かべながら答えた。

「だって、制服であのメガネならまだね、浮いていたとしても高校生だからって大目に見てもらえるところってあるでしょう? 大学生で、私服であれだと、さすがに痛い子だし、服も似合うのが全然ないし……」

 化粧をしても、メガネで隠れてしまうのが惜しいと思ったのだ。コンタクトレンズデビューをしたのは高校を卒業してからだけど、コンタクトレンズをしない時のメガネも、大学に入ってバイトを始めてから作り直した。

 それまではわざと瓶底みたいに厚いレンズを使っていたけれど、レンズを圧縮して、フレームもスタイリッシュなものに変えたらおしゃれの幅も広がった。

「玲央こそ、どうしてこんなに遠回りしたの?」

 学生の頃から好きだったと告白されて、正直嬉しかった。当時から両思いだったことが今でも信じられないくらいだ。
 私の問いに、玲央は顔を赤く染めながら、ポツリポツリと答えてくれる。

「だって、高校の頃の真冬って、とりつく島もないくらいキャラが立っていただろう? 大学に入ってからイメチェンして、綺麗になって、真冬のこといいなって言う男どもは後を絶たなかったの知らないだろう?」

 意外な事実を聞かされて、私は鉄砲玉を喰らった鳩のように目を丸くする。

「高校の頃のように瑠璃が同じ大学にいてくれたら、俺も安心だったけれど、あいつは違うところに進学したし……。あの頃のように、真冬のそばにいられるならと思って、真冬の友達を味方につけるつもりが、他人(ひと)の気持ちほど難しいものはないな」

 大学時代の玲央と私が親しくなった友達は、これ見よがしに付き合いを始めた割に、どれも長く続かなかった。

< 27 / 28 >

この作品をシェア

pagetop