遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
「で? 何か用事があってうちに来たんでしょう?」
職場では同期でも、玲央は御曹司であり職場の上司だ。そんな玲央の顔色を窺って、自分から意見を述べず玲央の言うことに従っていた私だけど、まさか自分から用件を問われると思っていなかったのだろう。玲央は鉄砲を食らった鳩のように、間抜けな表情を浮かべている。
「あ、ああ……。俺も今、仕事終わりでさ。その……、真冬と一緒に食事でもできたらなと思って……」
玲央の言葉が、どんどん尻つぼみしていく。
私のことを『いつでも抱ける都合のいい女』扱いされるなんて、まっぴらだ。
私は少し大げさに溜め息を吐き、キッチンへと向かう。
「そう……。あいにくだけど、冷蔵庫の中に食材はないし、今日はご飯も炊いてないんだ。それに第一、彼氏ならともかく、同級生かつ上司である私があなたに私がご飯を食べさせてあげる理由はないと思うんだけど?」
私が正論を口にすると、玲央は瞠目している。まさか職場では自分に従順な私が、真っ向から牙を剥くと思っていなかったのだろう。
「そ、それはそうだけど……」
「で、食事以外に何か用事でもある?」
私はできるだけ自分の感情を抑え、冷静に言葉を発している。けれど、その声は思っていたよりも低く、玲央も意表を突かれたのか、いつもの俺様モードは鳴りを潜めている。
「…………」
玲央は黙ったままだ。その表情は、いつもと違う私の態度に戸惑っているように見える。
当たり前だ。仕事上ではあなたに従順な私だけど、プライベートではそれをやめるんだ。
職場では同期でも、玲央は御曹司であり職場の上司だ。そんな玲央の顔色を窺って、自分から意見を述べず玲央の言うことに従っていた私だけど、まさか自分から用件を問われると思っていなかったのだろう。玲央は鉄砲を食らった鳩のように、間抜けな表情を浮かべている。
「あ、ああ……。俺も今、仕事終わりでさ。その……、真冬と一緒に食事でもできたらなと思って……」
玲央の言葉が、どんどん尻つぼみしていく。
私のことを『いつでも抱ける都合のいい女』扱いされるなんて、まっぴらだ。
私は少し大げさに溜め息を吐き、キッチンへと向かう。
「そう……。あいにくだけど、冷蔵庫の中に食材はないし、今日はご飯も炊いてないんだ。それに第一、彼氏ならともかく、同級生かつ上司である私があなたに私がご飯を食べさせてあげる理由はないと思うんだけど?」
私が正論を口にすると、玲央は瞠目している。まさか職場では自分に従順な私が、真っ向から牙を剥くと思っていなかったのだろう。
「そ、それはそうだけど……」
「で、食事以外に何か用事でもある?」
私はできるだけ自分の感情を抑え、冷静に言葉を発している。けれど、その声は思っていたよりも低く、玲央も意表を突かれたのか、いつもの俺様モードは鳴りを潜めている。
「…………」
玲央は黙ったままだ。その表情は、いつもと違う私の態度に戸惑っているように見える。
当たり前だ。仕事上ではあなたに従順な私だけど、プライベートではそれをやめるんだ。