遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
「用事がないなら、帰ってもらっていい? 私、ちょっと疲れてるんだ。今日は早く休みたい」

 私はそう言うと、玲央を無視して玄関へと向かった。
 さあいつでもお帰りくださいと、玄関の鍵を開け、扉を開ける。
 そんな私の姿を、玲央は呆然と見つめている。

「夜だし外から丸見えだから、早く帰ってくれる?」

 私はそう言って玲央を追い出すと、玄関の鍵とドアガードをしっかりと掛ける。

 玲央の足音は聞こえない。おそらくまだ外にいるのだろう。
 でもそんなの知ったことではない。私はドアの施錠を終えると、玄関の明かりを消し、部屋へと戻る。テーブルの上に散乱した器をざっと洗い、ゴミ箱へと捨てると、テレビのスイッチを切り、浴室へと向かった。

 蛇口から出るお湯をシャワーに切り替え、お湯を最大まで出すと、勢いよくシャワーからお湯が飛び出してくる。私は俯いたまま、シャワーを頭から浴びた。

 頭上からお湯が流れ落ちる。顔にもお湯が飛び散り、ずぶ濡れだ。
 これはお湯か、涙なのか、その境目がわからない。
 私の泣き声は、シャワーの水音にかき消されている。

 そうだ、あんなやつのために泣いているなんて、だれにも知られたくない。

 今夜、思いっきり泣いて、忘れるんだ。
 玲央に抱かれたことも、玲央への思いも――

 入浴を済ませ、洗面所でスキンケアを済ませると、タオルとドライヤーを持ってリビングへと戻る。先ほど消したテレビを点け、サブスクのチャンネルに切り替える。再生させる前に髪の毛を乾かし、リラックスモードになったところで番組を再生させる。
 楽しみにしていた番組なのに、玲央のせいで全然内容が頭の中に入ってこない。

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