遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
 高校時代、私は彼のことが好きだった。
 こんな女たらしだと知っても、好きだという気持ちは止められなかった。

 彼の見た目は、芸能人と比較しても見劣りがしないくらい整っている。そんな見た目に惚れる女子生徒も多数いたけれど、私は見た目だけで彼のことを好きになったわけではない。
 彼は、学生時代、勉強しか取り柄がなくてクラスで浮いていた私の心を救ってくれた恩人なのだ。

 今でこそ化粧をきちんとして身なりや髪型もそれなりに整えているけれど、学生時代の私は度の強いメガネにおかっぱ頭、見た目が強烈な優等生だった。

 クラスで陰口を叩かれていたことも知っている。
 でも、学力だけはだれにも負けなかった。

 中間、期末考査では、決まって上位の成績に食い込むだけの学力を自負していたし、そんな連中なんて眼中にもなかったし、勉強を頑張っていい大学に進学すれば、そんな人たちとは縁が切れる。そう思って頑張っていた。

 そんなある日のことだった。
 私は先生に頼まれていた用事を済ませ、教室に戻ってきた。教室に入る手前で、教室内に人の気配を感じた。
 どうやら男子生徒数人が居残りで、雑談をしているようだった。教室の引き戸に手をかけようとしたその時、聞こえてきた声に私は手を止めた。

「やっぱ、このクラスの女子ってレベル高いよな、あのおかっぱメガネ以外」

「ああ、それな! おかっぱメガネ、あいつ勉強ばっかりで化け物みたいな成績だけど、だれか喋ったことある?」

「いや、あいつ、明らかに俺たちのこと馬鹿にしてるだろう? あのごっついメガネ、あんなの今どき見ないよな」

「言えるー! せめてレンズを薄くするとか、髪の毛もぱっつんやめたらイメージ変わるんじゃね? あれは男にモテないぞ」

 どうやら私の成績が気に入らない男子たちが、こぞって私の悪口を言い合っているようだ。

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