聖女召喚されたけど、思ってたのと違う ~冷遇聖女は喜んで竜族な王子への手土産になります~

つまるところ、嘘から出たまこと

 あれから三日経ち、ディーカバリアの使節団が帰る日――私が彼らの手土産として貰われていく日がやって来た。
 彫刻はあれからさらに三日分増えて、もはやテーブルに並べるというより盛ってある。何せ時間は一杯あったからね、めっちゃ彫った。
 その彫刻については、マリアナさんが買い取りを申し出てくれた。私は「あげます」と言ったのに、彼女はそれに対し「対価を払うべき作品ですから」と返してきたのだ。
 そんなマリアナさんは、今この部屋の壁際に控えてくれている。クノン国がただで手に入れようとしたなら、それを阻止してくれるらしい。心強い。
 私に良くしてくれたマリアナさんの手に渡るなら、本望だ。本音は手放したくないけれど。
 と、そこへ扉がノックされる音が聞こえた。とうとう見納めかと一度じっと作品たちを見てから、私は部屋の入口へと目を戻した。

「失礼する」

 声とともに入室してきた人々を見て、驚く。
 明らかにクノン国の人たちとは違った身なりの人々だった。やはりファンタジー感漂う感じではあるが、こちらは褐色の肌をしていて髪も濃い色だ。名乗られるまでもなく、ディーカバリア国の使節団とわかった。
 男女合わせて五名の使節団は、私を取り囲むようにしてずらりと前に並んだ。
 美男美女揃いの使節団の中でも、中心に立っていた人物は特に美形な男性だった。
 針葉樹のようなツンツンした緑の短髪。明るい灰色の瞳。盛年で、背もかなり高い。これはそこに立っているだけできっと多くの女性がうっとりすること請け合いだろう。
 ――が、どうしたものか。うっとりした表情をしていたのは、他でもない男性の方だった。

「おお、これが異世界からやって来た聖女なのか。確かに珍しい……」

 私も私でその神がかったご尊顔に、ついつい挨拶も忘れて魅入ってしまう。
 そんな私を彼は、頭の先から足の先までじいっと見てきた。そしてさらに私の周りをグルッと一周――いや三周くらいした。

「よし、俺の宮に(まつ)ろう」
「⁉」

 え、まつ……祀る⁉
 あまりに想定外な台詞が彼の口から飛び出し、やはり声を掛けられないままぽかんとしてしまう。
 宰相さんが言っていた『飾ってもらえる』という言葉、百パーセント冗談と思っていた。それなのに、『飾る』よりもまだグレードアップしている。竜族の珍しいものに掛ける情熱、半端ない。さすが七ツ葉のクローバーに金貨を出す国……。
 驚愕に固まってしまった私の頭を、男性が慎重な手つきでなでなでしてくる。「俺の宮に祀る」と言うからには、この人が私が贈られた相手――ディーカバリア国の第二王子クエルクス殿下その人なのだろう。
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