甘い夜更け。朝を憎んだ。
「朝之先輩のお部屋、初めてですね」

物珍しそうに佐藤がキョロキョロと部屋を見渡した。
見たって面白い物なんてないだろうに。

それでも佐藤は生まれて初めておもちゃを与えられた子どものように爛々と瞳を輝かせた。

「意外です」

「何が」

「カーテンの色」

「何色だと思ってた?」

「んー。やっぱり黒とかネイビーとか、そういう夜みたいな色、かな」

「ごめんね。青空みたいなカーテンで」

うすい水色のカーテン。

思い入れがあるわけじゃない。
中学生の時に母さんが取り付けて、こだわりがあるわけじゃないからそのままにしている。

唯一、今の俺に意見を言える権利があるのなら、第一条件は絶対に「遮光性の高いカーテン」だ。

うすい水色のカーテンは、陽当たり良好のこの部屋では存分に力を発揮する。
朝日と共に目覚めるなんて健康的ではあるけれど、低血圧気味の俺にとっては迷惑でしかなかった。

「似合ってますよ」

ふふ、と佐藤はやわらかく笑った。
< 100 / 185 >

この作品をシェア

pagetop