甘い夜更け。朝を憎んだ。
校長室には校長と佐藤のクラス担任、生徒会の顧問が居た。

「朝之くん、すまないね。時間を割かせてしまって」

人の良さそうな丸顔に、困っていない時でも八の字に垂れた眉。
薄い毛髪のせいだろうか。
丸くて大きい目が余計に際立って見える。

「いえ。他人事ではないので」

「助かるよ。えーっと…きみが佐藤…アマイさんだね?」

「はい…」

消え入りそうな声で佐藤が頷いた。
隣にいるから俺には聞こえたけれど、もしかしたら教師達には聞こえていないかもしれない。

「二人とも掛けなさい」

校長室の真ん中を陣取るように設置された大きな木製テーブルに、革張りのソファ。
校長の向かいに促されて、俺と佐藤は掛けさせてもらった。
佐藤の担任と生徒会の顧問は、校長の後ろに立ったままだった。

校長が俺と佐藤の中間くらいに、縦三つ折りにされた数枚の紙を置いた。
真っ白のコピー用紙みたいだった。

「これは?」

「今朝、事務室のポストに投函されていたんだ。宛先は私の名で、差出人は不明。切手も、もちろん消印も無かった」

学園の下足箱のすぐ横に事務室がある。
在籍している生徒のデータ管理、イベント管理や訪問者の応対も担っている。

学園宛の封書は郵便局員が事務室で手渡しをするか、不在時には簡易ポストに投函される。
切手が無いということは「犯人」が直接投函したのだろう。

昨日の放課後にはこんな騒ぎは起きていなかった。

誰よりも早く登校をして二年四組に忍び込んで「スクープ記事」を貼り出してから、
封書を投函して姿を消したのか。
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