甘い夜更け。朝を憎んだ。
授業開始のおかげで来栖から逃げられた、なんて思っていたのは俺の甘い考えで、
このままパッと教室から姿を消せるわけではない。

五時間目が終わると速攻、来栖は俺の席まで大股でやって来た。

「ちょっと蜜くん!不参加とかジョーダンだよねっ!?」

教室中に聞かせたいのか声を張り上げた来栖は腕を組んで、座ったままの俺を見下ろした。

「あんまり大勢は得意じゃないんだ」

「みんな密くんが来ること期待してんだからね!?」

「みんなって誰」

「みんなはみんなだよ。分かってんでしょ!?」

「でも俺が行かなくったってみんなちゃんと楽しいと思うよ」

「絶対に呼べるって言っちゃったんだから!ガッカリさせないで…お願い」

「ガッカリって誰を?みんなを、それともきみを?」

「………どっちもだよ!」

「ふーん…。どうしようかな。夏休みかぁ。祖父の実家にも帰省しなきゃだし予定が合うかなぁ」

「もちろん蜜くんに合わせるよ!みんなだってそれでいいと思う。ねっ、みんな!?」

来栖がパッと輝かせた表情でぐるっと教室を見渡した。

会話を聞かせる為に大声を出したんじゃなくて、
最初からその場に居る全員を会話に参加させていたみたいな口ぶりだった。

学級会じゃあるまいし。

そばに居た女子達が「朝之くんが来るなら夏休みの全スケジュール空けとくよねっ」なんてハシャいでいる。

俺一人の為にそんなに献身的になれるとは。
喜ぶべきなのか?
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