甘い夜更け。朝を憎んだ。
「…奥さん」

佐藤のお母さんが立ち上がって、土下座を続けたままの奥さんの肩に触れた。
涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げて、くちびるをギュッと噛み締めている。

「私は一番傷ついたであろう当事者の娘に従います。それから…あなたのせいでもないから。娘を守りたいという母親の心も理解して差し上げたいので。でもご主人のことは一生許しません。恨みます。これはご主人に対してじゃない。あなたと娘さんへの情けです。忘れないでください」

「ありがとう……ありがとうございます…ごめんなさい。ごめんなさい………」

あとは大人達だけで話し合い、この件に決着をつけるからと、俺と佐藤は応接室から退室させられた。

「生徒会室行く?」

訊いた俺の手を佐藤がギュッと握り締めた。

「いいんですか?」

「教室に戻る元気なんかないだろ。あー、てか帰っちゃおっか」

「え?」

「今日はもういいでしょ。後で俺が担任にも言っといてあげる」

「でも蜜くんは…」

「大丈夫に決まってんじゃん。今日は生徒会の仕事もないし平気だよ」

佐藤が微笑む。
申し訳なさそうな、悲しそうな顔だった。
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