甘い夜更け。朝を憎んだ。

暗幕

夏休みを一週間後に控えた金曜日。
一学期最後の生徒定例会があった。

生徒会役員が中心となって、各委員会の委員長、部活動の部長、二学期に控えている学園行事の実行委員などが集まって開かれる会議だった。

一学期中、それぞれに与えられた予算と活動内容、かかった経費、
それらを踏まえた上で二学期に獲得できる予算が決まる。

どこも真剣に取り組んでいる分、誰だって予算は高く獲得したい。
期末の定例会は通常よりも空気がピリついていたし、
ふざける生徒なんかここには居なくて、
俺は結構気に入っている時間だった。

「それじゃあ、そうだな…佐藤さん。書記をお願いしてもいいかな」

ちょうど対面に座っていた生徒会役員、二年生の佐藤に声を掛けた。

俺と目が合った佐藤はゆっくりと頷いて立ち上がると、黒板横に設置されたホワイトボードへと歩み寄る。

ノートへの記入は佐藤の隣に座っていた男子が請け負ってくれた。

俺が指名した順に委員長や部長が今学期の報告をしていく。

二学期に行われる体育祭や文化祭の実行委員からの提案や疑問点まで、
佐藤は丁寧にホワイトボードへ記していった。

癖の無い、枠にはめたような、それだけで好感が持てそうな文字だった。

一通りの報告が終わった時。
生徒会顧問の男性教師がずっと体を預けていたスチールパイプの椅子からゆっくりと腰を上げた。

三十代半ばくらいのその教師は、こほん、ともったいぶったような咳払いを一つして、
細い銀縁フレームの眼鏡をクイっと上げて、俺達をスーッと見渡した。

その動作の全てが計算されているような、
この日の為に練習を重ねてきたみたいに見えて、憧れている小説かドラマでもあるんだろうかと思った。
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