甘い夜更け。朝を憎んだ。
佐藤のクラス、二年四組にスクープ記事を貼り付けたのは俺だ。

物凄く面倒ではあったけれど一晩で作成した記事を持って、まだ誰も登校していない早朝を狙って校内に忍び込んだ。
出勤してきている教員に見つからないことだけに注意を払った。

校門、玄関前、事務室前の防犯カメラは前日の下校時に事務員の女性を一人、買収した。
…金は払っていないけど。

二十四歳になったばかりだというその女性は、普段から俺を見ている瞳に「色」が混ぜっていることはとっくに気づいていた。

記者に声をかけられてから佐藤と打ち合わせをして、
この日中に全てを片付けたかった俺は昼休みを狙って事務室の女性を空き教室に連れ出した。

一人で廊下を歩いているところで声をかけて連れ出すのは簡単だった。

「とんでもないことをお願いするけど、なんでも言うこと聞きますよ」

喜んで、簡単に承諾してくれた。
防犯カメラを停止させてくれた夜に女性とは寝た。

誇らしげに俺を招いた一人暮らしのマンション。
少女趣味のベッドの中で、「これっきりだなんて言ったら秘密バラしちゃうかも」と女性は不敵な笑みを見せた。

「だったらきみのこと、大嫌いになってこの世から消しちゃいたくなっちゃうかも」

髪に触れながら微笑んだら、
女性は「いじわる言わないで…」と甘い、甘過ぎる口調で言った。

あの女性のおかげでスムーズに事が進んだのは事実だし、
面倒になるまではキープでもいいかな。

そんなことを思いながら、スクープ記事を作成する為に早々と女性の部屋を出た。
一日で処理しなければいけないことが溢れていて憂鬱だったけれど、
あの男の下品な表情を思い出すだけで体は自然と動いた。
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