甘い夜更け。朝を憎んだ。
「“定例会らしい”会議はこれで終わりだな。さて、きみ達にとって一番と言ってもいい問題がまだ解決していないな?」

教師の言葉で、書記を担ってくれていた佐藤が俯いてギュッと手のひらを結んだ。

生徒会室自体がザワッと一瞬騒がしくなる。

「静かに」

俺の声で再び戻った静寂。
満足そうに頷いた教師が佐藤から水性マジックペンを受け取って、くるりと反転させた、真っ白なホワイトボードに大きく書いた。

“二年生女子の失踪について”

この教師は何か、演出的なことが好きらしい。
そんなにもったいぶった書き方をしなくても誰だって認識しているんだから、普通に書けばいい。

夜乃(よるの)とばり、失踪事件”と…。

認識しているも何も、“夜乃とばり”は俺達と同じ、生徒会役員だった。

二年生。
本来の書記は夜乃とばりで、
俺が今日書記を任せた彼女、佐藤アマイは夜乃の親友だった。

夜乃とばりの失踪が明るみに出たのは七月一日。

前日の六月三十日の放課後。
生徒会の集まりにも姿を現さなかった。

七月一日は朝から職員会議が行われて、
その後、最初に夜乃と佐藤のクラスで夜乃の失踪が告げられた。

二時間目は通常通り授業があったけれど、生徒会役員達は生徒会室に集められた。

当然、一番初めに教師達は佐藤へ詰め寄った。

親友の突然の失踪。
混乱する頭を抱えて、動揺が隠し切れるはずもないのに詰め寄る教師達に、佐藤は震える声でただ「分かりませんっ…とばり…なんで…」と呟いて泣き崩れた。

六月三十日も、夜乃は出席すらしていなかった。
家族も友人も夜乃を見たのは六月二十九日が最後。
生徒会の集まりも無かった。

夜乃は自宅からも学園からもマジックみたいにきれいに姿を消した。
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