甘い夜更け。朝を憎んだ。
「先生、その件に関して生徒会や彼らには無関係だとは言いません。ですが首を突っ込むのもいかがでしょうか」

言った俺を教師は一瞥して、すぐに全員に向き直った。

「あれから二週間が経った。夜乃は未だに発見されていない。それに、見ろ」

教師が窓に歩み寄って、閉めていたカーテンをスッと開けた。

運動場と、その先に校門が見える。
校門の周りには何日か前から雑誌やテレビの記者が張り付くようになった。

夜乃の失踪には事件の可能性もあると、警察も介入しているらしい。

放課後になると記者達が適当に生徒を捕まえては不躾にインタビューしてくるものだから、教師が追い払う、という業務が増えているようだった。

「今も生徒達の平和な日常が脅かされている。自主的な失踪にしろ事件にしろ、他者に与える影響が大きい以上…!」

「事件なら尚更ですよ」

「なに…?」

「事件だとしたら、“危ない大人”が絡んでる可能性もありますよね?そのような危険なことに生徒が首を突っ込めと、先生はおっしゃるんですか?」

「だったら朝之。お前は生徒の代表として仲間を見捨てると、そういうことか?」

はぁ、とあからさまについた俺の溜め息に教師は嫌な顔をした。

「せんせーい。“俺が”見捨てるなんて言ってませんよ。彼らの日常を守る為に余計なことはさせないし、夜乃のことも必ず還してあげます。生徒会長として。一度関わった生徒のことは守りますよ。だから…」

立ち上がった俺を、そこに居た全員が見上げた。
佐藤に至っては溜まった涙をこらえきれずに泣いてしまっている。

「余計なことしないでください。今、生徒達の心を不安にさせてるのはあなたも同じです」
< 16 / 185 >

この作品をシェア

pagetop