甘い夜更け。朝を憎んだ。
五章

君さえ居てくれるなら。世界に絶望しないのに

二学期の終業式が終わるまで来栖とは接触しなかった。
佐藤とは生徒会で顔を合わすけれど、佐藤が望むようなことはしない。
指一本触れてもらえない佐藤には徐々にフラストレーションが溜まっていっていることは容易に見て取れた。

「蜜…!」

十二月二十三日。

終業式が終わって、十一時過ぎには下校の号令がかかった。
教室を出ると、その前で待ち構えていた佐藤に呼び止められた。

「早いね。もう終わってたの」

「はい。待ってました」

「まるで忠犬だね」

「生徒会の集まりもないからこうするしかなくて…」

「連絡くれればよかったのに」

「どうしても会いたかったんです」

「なんで?」

「なんでって…なんでそんな意地悪ばっかり言うの」

「あはは…ごめんね。ね、アマイ」

「はい」

「明日まで我慢できる?」

「え…」

「明日はさぁ、イブじゃん」

「…!そう、ですね」

「″特別″なことは、特別な日にしたいじゃん」

「ずるい…」

「なーんにもずるくないよ。明日、夕方の七時くらいにうちに来れる?」

「いいんですか?」

「俺が誘ってるんだから。アマイこそ、いいの?」

「蜜より優先するものなんてないです」

「可愛いね。じゃ、約束だよ」

ぽんぽんって頭を撫でたら、佐藤は石になったみたいに固まった。
いつまでも俺の行動に慣れないアマイに、さすがに(ほだ)されそうになることはある。

普通の、ありきたりな感情で人を愛せることがどんなに素晴らしいことか。
もう一度やり直せる赦しが俺にもあればよかったのに。
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