甘い夜更け。朝を憎んだ。

夜乃とばり

初恋だった。

これ以上、どれだけ生き続けたって俺の世界は何も変わらない。
必要以上に神格化された俺を求める女達に、求められるだけ与え続けて、
都合よく神様になって、都合よくクズな悪魔に格下げされる日々。

そうやって勝手に満たされて満足なら、別にもうどうでもよかった。

高校を卒業したらいっそ死んでもいいな。

新しい出会いを繰り返すたびに搾取されて摩耗していくのなら二年に上がる頃には死んでもいいかもな。

あと一日。
明日になったら死んでみようかな。

そんな風にしてだらだらと惰性で生きた日数だけを増やしていく日々。

一年生の頃から生徒会に所属していた。
そのまま、当時の生徒会長からの任命もあって、二年生でも役員として所属させてもらえることになった。

ポジションは会長・副会長代理。
順当に行けば三年生ではそのどちらかに就任できるポジションだった。

二年生に上がった春。
新しい生徒会役員達との初対面の日。

そこに夜乃とばりは誰よりも洗練された姿でスッと立っていた。

本当に同じ人間なのかと疑いたくなるようなキメの細かい陶器のような肌と漆黒の髪。
視線を合わせた瞬間にどうにかなってしまうのではないかと恐ろしささえ覚える深い瞳。

夜乃とばりを覆い尽くす全ては複雑に絡まり合いながらも、それこそがこの完璧な造形美を作り上げているのに、

きれいな人間。

そう、シンプルな言葉しか思い浮かべられないくらいには
俺の脳内は冷静さを失っていたように思う。
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