甘い夜更け。朝を憎んだ。
夏場は一日中エアコンをつけっぱなしにした。
夜乃が居たからだ。
あんな中に閉じ込めていたら、夜乃はとっくに死んでいただろうと思う。

だから、恐らく跳ね上がるであろう電気代のことが気にはなったけれど、
自動で引き落としになっている光熱費を母さんが気にする素振りは見受けられなかった。

母さんが夏の日に茹でてくれていたそうめんも、夜乃に食べさせる為にこの部屋に運んだんだった。

あの日は佐藤から「会いたい」とメッセージが届いていて、
佐藤が心配している様子が夜乃にも伝わるようにスマホを床に置いてスクリーンを二人で眺めていた。

十月も半ばになると、冷房をつける必要はなくなって、
暑い日は窓を開ければ十分だった。

いい子のとばりは窓の外から自分の姿が見えるような行動は取らなかったし声も出さなかった。

ただ静かに俺の帰りを待っていた。

監禁後。
夜乃に取っては俺の存在が全てだった。

俺が与える物のみでしか生きられない。
俺の存在でしか自分以外の人間を認識することができない。

その恐ろしく美しい体だって俺からの恵みがないと保てない。

母さんが居ない日中には部屋から連れ出してシャワーを浴びさせた。
夜乃はなんの戸惑いも見せずに俺の前で裸体を晒し、
生きていることを実感するかのようにシャワーを浴びた。

夜乃の裸体は言語化できない。
そうすることによって極めて稚拙なガラクタに成り下がってしまうような気がした。
それほどまでに崇高で、美しいなんて言葉では追いつかない。

なんて可愛いんだろう。

なんて尊いのだろう。

この世界には夜乃とばり以外の正解なんてあり得ない。
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