甘い夜更け。朝を憎んだ。
「もう。アマイってば、そんなに思い詰めた顔しないで?私はね、蜜先輩に聞いた時、心底うれしかったんだよ?″アマイと一緒に記者を殺した″ってね」

「夜乃さん…正気なの?」

「来栖先輩」

「なに…」

「あなただってもう正気なんかじゃないくせに」

「どういう意味よ!」

「蜜先輩に溺れてる」

「それは…」

「その時点でもうおかしくなる覚悟、できちゃってるんでしょう?」

「私は…」

「人殺しまではやってないからまだマシ、ですか?それならアマイだってそうですよ。″そうなるように仕向けた″ってだけで本当に殺したわけじゃない。蜜先輩が私達の幼馴染にやったことも同様に。彼らにはただ逆境に打ち勝つだけのメンタルが足りてなかった。それだけです」

「だったら…」

「だったらなんで二人が″人を殺した″って言うのかって?」

「…えぇ」

夜乃は言った。

ゆっくりと。
小さい子どもをあやす母親の、慈愛に満ちたような声で。

「甘いからですよ。共犯だと特に、ね」

「甘い?」

「そうです。舌先に残るほどの甘さなんて憶えちゃったら後戻りなんてできない。アマイからすれば尚更でしょう?だーいすきな蜜先輩とのとびきりの秘密なんだもん」

「でも蜜は…」

「そうね。蜜先輩にその甘さは必要ない。ただ単に…」

「なに…」

「あなたを手中に収めたくて、操る為にその蜜を舐めただけよ」
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